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建築家トップ > コラム > 第1回 シックハウス > シックハウス症候群に関して知りうる限りのこと

第1回 シックハウスについて
・・・シックハウス症候群に関して知りうる限りのこと・・・
(有)松尾設計室 松尾和也

最近「シックハウス症候群」という言葉をよく耳にするようになりました。
ありきたりな説明は省略しますがシックハウス症候群にならないような家作りをするには大きく分け二つの方法しかありません。

●有害物質の使用を極力少なくする。
●住宅内の換気をきちっと行う。

この2点につきます。
まず上の「有害物質の使用を極力少なくする」ためのひとつの方法として自然素材の利用があります。
木造の良さを別のページで話させて頂きましたが、木に限らず自然素材といってもいろいろあります。

例を挙げると
●竹
●紙
●土
●石
●自然素材のみを利用した塗料
●麻、ウール、綿、
●リノリウム(自然素材のクッションフロアのようなもの)

また一般的に自然素材と人口建材には次のような差があります。
自然素材   人口建材
○基本的に化学物質等を含まない。   ×化学物質等を含んでいる。
○年とともに味わいを増す。   ×新しいときが最もきれい。
○精神的に落ち着く効果がある。   ×そのような効果は期待できない。
×形が変形するなどの不安定がある。   ○ほぼずっと形がかわらない。
×色が変色するなどの不安定がある。   ○自然素材に比べて変色しにくい。
×人口建材に比べるとデリケートである。   ○自然素材に比べると丈夫である。
×コストが高くなりがち。   ○コストは安くなりやすい。
×メンテナンスが必要になることが多い。   ○メンテナンスはあまり必要ない。
×品質のばらつきが大きい。   ○品質のばらつきが小さい。
×材料の入手が比較的難しい。   ○カタログ一つで発注可能
×設計施工者には手間がかかる。   ○設計施工者には楽である。
 

以上のような違いがあります。

この比較を見ていただければ、おおまかに両者の特徴がつかんでいただけると思いますが、もう少し余談をお話します。

つい数年前までは、人口建材のコストや、省施工性の面ばかりがクローズアップされ、ほとんどの住宅において自然素材はあまり使われませんでした。
確かに作る側からすれば上記のような理由から、圧倒的に人口建材の方が楽に施工できます。ほんの少しのことでクレームをつけてくる方が増えた中、手間隙かかる自然素材よりも、人口建材に流れたのも仕方がなかったのかもしれません。

私どもでも、自然素材を使う場合は、あらかじめ、変形、変色等が起きることは完成建物を見ていただいた上で、それでもそれを超える味わいや良さを分かって頂ける方にのみ、お勧めしているというのが実情です。

ところがここ数年、「ビフォーアフター」をはじめ、徐々に自然素材が取り上げられるようになったことや、 「癒し系」の定着などによって、徐々に自然素材を利用する会社が増えてきました。これは大変いいことだと思います。

不況が続く中でストレスが増大する社会において家にいるときぐらいは、精神的安定を求める人が増えたということもいえるでしょう。又、大手住宅メーカーなどでは、なにか「売り」がなければとても太刀打ちできないという理由から、自然素材を利用する会社も数多く存在します。

話は変わりますが、「人口建材は化学物質を含むから有害か?」というと一概にそうも言えなくなってきています。特に平成15年7月以降の建材に関しては、ホルムアルデヒド等の含有量に応じて、F☆からF☆☆☆☆までの4ランクにランク付けが義務付けられ、最高ランクのF☆☆☆☆以外の建材を使う場合はかなり面倒な計算書を設計者が提出する必要があるせいもあって急速に、人体への影響の少ない建材が出回り始めました。

ところがこの最高ランクのものでも化学物質の量が0ではないので、重度のシックハウス症候群の患者には利用できないということです。自然素材でも薬剤処理をしているものが多い中では、「人口建材=危険 自然素材=安全という事はなくなっています。」

また木材に見せかけた人口建材に多いのですが、薄皮一枚だけ本物を使って下地はベニヤというようなものがたくさんあります。こうすればそれぞれのいいとこどりをしたような商品になるかと思います。しかし、やはり本物の厚みのある木に比べれば、調湿性や歩行性など目に見えない部分での違いは明らかです。

そもそも発想自体が、貧相に感じるのは私だけでしょうか?
また、純粋なシックハウス症候群だけではなく、アトピーや花粉症などといった、昔はあまり聞かなかった病気が多発しているのは、食品に含まれている化学物質と、建物が放つ化学物質によって、人間の抵抗力が弱くなったことが原因とも言われています。

ここで余談になりますが、非常に興味深い内容なので、某大手接着剤メーカーに勤める友人が私のホームページを見て送ってきた文章をそのまま掲載します。(固有名詞は省略します。)
前略・・・接着剤から出てくるホルムアルデヒドについてやけど、最近は企業努力でほとんど出ないようになっとるから、ちゃんとしたの(特に○○○^^;)を使えば全く問題はないと思う。そもそも、今接着剤に課せられている規制値は異常な少なさです。あれ(F☆☆☆☆)をクリアするものは、まず問題ないでしょう。まあ、“例外のないルールはない”で、過敏症の人にはそれでもダメなのかもしれませんが。

逆に規制値が小さすぎて問題が出ています。それは、接着剤よりその他のものから出てくるホルムアルデヒドの方が多いことです。

一番の出所は、「木」とも言われています。木から出てくるのは当たり前 (ホルムアルデヒドは実は天然物質です)なのですが、あまりみんな大きい声で言いません。おそらく建材メーカーの力が非常に強くて、弱い接着剤業界はやられてしまっているような気がします。ただ、建材メーカーも吸着剤を塗ったり色々やっているみたいです。接着剤業界は他の部分でもかなりやられています(どう考えてもカップ麺の入れ物にいっぱい入っていそうなスチレンなど)。ちなみに、「木からホルムアルデヒド」をデータで言うと、うちの誰かが測定していましたが、ホルムアルデヒドが一番出たのは、実験室でも分析室でもなく“図書室”(あるいはおそらく図書館でも、図書館は検査したことがないので分かりませんが、同じ理論でいくとホルム出るやろな)だったそうです。これは木からできた「本」がいっぱいあるからです(と考察していました)。このように、安全のために規制するのはいいのですが現実にあった規制をしてくれないと、実働企業は大変です。EUはその分野の規制がかなり厳しい。だけど、その規制のために今産業界がかなり困っているそうです。

ホンマかどうか知らないけど、向こうでは日本でいう厚生労働省みたいなとこで、どんどんビシバシ決めてしまうそうです。日本では一応工業界が少しアピールできるので、まだましかもしれません。

笑い話では、知っていると思うけど「アセトアルデヒド」という物質も規制しようという動きがあります。何が笑い話かというと、ご存じのように「アセトアルデヒド」はお酒を飲んだとき人体から出てくるためです。そのために、「企業の分析室の人間は、測定の前日はお酒を飲まないようにしなければならない」そうです。これは、企業の分析室スタッフもそうですが、分析専門の会社の人に聞いても、「そうしないとだめでしょうね・・・」という答えでした。

次に、VOCの問題があります。揮発性有機化合物(一般に言われる有機溶剤)を規制しようという動きです。ものによっては全く入っていてはいけないというものもあります。これが困ったもので、特に低分子有機化合物に関しては全く入っていないということは非常に難しいです。それは、一度入ってしまうとなかなか抜けないからです。例えば、原料メーカーが製造後の洗浄溶剤としてつかっていても、それがコンタミネーション(微量含有物)になり、最後までほぼ抜けません。たぶん、原料メーカーの原料メーカーが使っていても同じでしょう。最終製品にいくに従って濃度が薄まっていくだけです。

確かに、発ガン性物質(実は世の中にはいっぱいあります)は危ないかもしれませんし、その他の危ないものもあるでしょうが、他の規制がいっぱいあるので(たとえばPRTR法あるいは労安法、他にも細かいのを挙げればいっぱいあるでしょう)、もともと問題ないレベルだと思っています。ただし、それは大きな企業の製品に限りますが(ここで言う大きな企業は接着剤業界の中で大きな企業)。大きな企業(コニシも含めて)は、きっちり対策をやっています(と僕は思っています)。あくまでも一般的な低分子有機溶剤についての議論ですが、少なくとも化学に携わっている人もしくは化学に携わったことのある人は、微量成分は抜けないということを知っています。だから、僕は、例えば「この製品にはトルエン絶対に入っていませんか?」と聞かれても、「入っていません」とは答えません。どこからから(それは空気からでも)入ってしまうと、ppmあるいはppbのレベルでは絶対に“ゼロ”にはならないからです。

原料メーカーに聞くと、「○○○さんは、アプローチ(何か問題がありそうなものの代替を探そうという動き)は一番早く一番厳しいですよ。」ともよく言われます(セールストークかもしれんけど)。接着剤業界は中小企業がいっぱいあり、○○○は△△△あるいは□□□(の接着剤部門)をダントツで引き離しているにもかかわらず(僕はダントツとは思っていませんがそう言われています。)、シェアは14%くらいです。知っていると思うけど、14%のシェアというとふつう負け負け状態を意味します。でも、接着剤業界では違います。接着剤は、個々の製品、個々の仕様、個々の性能に合わせた細かいモディファイが必要になるので、小回りの利く小さい企業は生き残っていける構造になっています。そのような小さい企業は、色々な法律になかなか対応できないのではないかと僕は思っています。少なくともそれらの対応には、ものすごいコストがかかります。人という資源も使います。時間も使います。小さい企業は「ばれんかったらええわ」というスタイルなのではないでしょうか。

以上化学物質に対する、実情でした。面白かったのでそのまま掲載しました。



次に換気に関することです。

今の住宅で、きちんと換気を行うには高気密にする必要があります。一番頭がこんがらがるお話をします。

それが「気密」(高気密)です。これほど、設計者によって考え方がばらばらな項目はこの業界においても他にはないと思います。かくいう私も本当の結論にたどりつくまで、右往左往したのですが・・。ではなぞときの始まりです。

そもそもなぜそんなに意見が分かれるのか?それは「気密」(高気密)という言葉に原因があります。だれもがこの言葉を聞くと「息苦しい」と思われるのではないでしょうか?

一番多いパターン→この時点で高気密は良くないと考えます。少し横道にそれます。蓋がゆるゆるの魔法瓶ときつくしまった魔法瓶どちらの熱が逃げにくいですか?

答えは言いません。ただ多くの人は蓋がきつくしまった家には住みたくないと考えるでしょう。私もそう思います。

また話が飛びます。平成15年7月からシックハウスに関することで建築基準法が変わりました。これにより今までほとんどの家にはついていなかった「24時間換気システム」が全ての居室において義務付されました。どんな安いワンルームアパートでもです。

但し、例外があります。相当隙間面積?が15cu/u以上の建物には設置しなくてよいとなっています。

噛み砕いていうと、築60年位で、田舎にある、アルミサッシもついていない隙間だらけの住宅なら設置しなくてもいいですよということになります。この数字がどういうことを表すかというと、

「壁1uにつきどのくらいの穴が開いているのか」ということになります。
よって小さければ小さいほど隙間の少ない家(高気密住宅)となります。

この値を一般的にC値といったりもします。一般に高気密住宅といわれる住宅は2.0以下くらいです。超高気密をうたっているところで0.7以下くらいのところもあります。

これは施工の丁寧さによっても変わるところがあるので実際に気密測定をその家ごとに行わなければ正確な数値はわかりません。

ここでひとつ耳寄り話、設計者が熱環境に熱心かどうか?「気密測定やったことあります?」この一言で分かります。おそらく「はい」という設計者は百人に一人いるかいないかというところだと思います。
では「築20年から最近までの普通の家はどのくらいの数値なの?」 ということになります。
だいたい5〜10の間になっている場合がほとんどです。 ということは、ほんとはどっちにしろ15よりだいぶん小さい数字なので今の日本の住宅のほとんどは24時間換気しなくてはならないということになります。それはつまり現在でもほとんどの住宅が「ある意味高気密住宅になっている」ということになります。 人間が生活の中で一番多く体に取り入れるのは何でしょう?それは食料でも水でもありません。「空気」です。もっというと空気中の「酸素」です。

健康に対する意識が高まる中で、水や食事についてはずっと以前から注目を浴びてきました。空気については最近ようやく陽の目を浴びるようになり、「マイナスイオンブーム」が起こったのは周知の事実です。 しかしそれ以前の問題があります。家の中の空気はきちっと換気しなければ

・ 酸素が減っていく。
・ 二酸化炭素が増えていく。
・ 汚染物質の濃度が高くなっていく。
・ その家独特の臭気がしみついていく。

等の問題が発生します。

まとめると平成15年7月以前に建った家で、アルミサッシはついているのに24時間換気はついていない家は(ほとんどの家がそうだと思いますが・・・)こまめに換気しない限り、現状でも健康の観点から見て「換気不足」なのです。

ところが、いいか悪いか分かりませんが、建築基準法というものは法施工以前の建物に関しては強制力はありません。よってお金をかけて換気システムを設置しなくてもよいのです。

ちなみに耐震基準に関しても同じことが言えます。豆知識ですが、昭和56年に耐震に関する基準が大きく変わったのでそれ以前の建物とその後では明らかに耐震性が違います!

なんだかんだ行っても世間では高気密が良いといわれ始めている中で

「じゃあわざわざ高気密にしなくても普通の気密で換気扇つけたらいいじゃないか?」
「換気扇の穴開けて換気量増やさなあかんのになんで逆に高気密にせなあかんの?」

という声が聞こえてきそうです。それは家の中の隅々までよどみなく新鮮な空気がいきわたるようにするためです。

今後日本において建てられる建物はほとんどホルムアルデヒド等の物質は含まれず、又24時間換気は標準装備となっているでしょう。しかし、有害な薬品の種類は膨大であり、また住人が持ち込む家具などには有害な薬品が使われている場合が数多く見受けられます。

これらの不安を解消するには家の中の隅々までよどみなく新鮮な空気がいきわたるようにするしかないのです。すいません・・・2回も言ってしまいました。

じゃあなぜ高気密にすれば隅々まで空気がいきわたるのでしょうか?

昔はやった曲がりくねったストローを想像してみて下さい。

ストローはコップ(給気口)から吸い込んだ飲み物(空気)を目的の喉(排気口)まできっちり運んでくれます。
でも、もしこの途中に小さな穴が何個も空いていたらどうなるでしょう?
そうです。いくら吸っても喉まで飲み物はやってこないでしょう。
家に例えるならストローの途中経路がいろんな部屋にあたり、小さな穴は家のすきまにあたります。

ここで重要なのは空気の流れる道です。
家の中のどの部分も隈なく通らなければなりません。そうでなければ空気のよどみができてしまいます。当然よどみの部分の空気は汚いのでここにベッドの頭がきたりすると病気になったりしやすくなるという考え方があります。これが風水の考え方です。

最近の換気扇ではこの本質を無視し、確認申請を通すためだけに、給気と排気が一体になったものもありますが、狭い範囲でぐるぐる空気を回してもあまり意味がないのです。メーカーの良心が問われるところです・・・。

また、換気扇の選定においても高気密住宅においては静圧という数値が高いものでなければ所定の流量を確保しにくいのですが、そこまで考慮に入れている設計者はまずいないというのも実情です・・・。結論はこうです。

「高気密にして換気すると、あまり熱を逃がさないので快適性も高く、しかも24時間換気を組み合わせることで、新鮮な空気を吸うことができる。」ということになります。

以上が私のシックハウス症候群に関する見解です。

再度いいますが、防止策としては

・ 有害物質の使用を極力少なくする。
・ 住宅内の換気をきちっと行う。

ことしかないと思います。
 
(有)松尾設計室 http://www.matsuosekkei.com/
 
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