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建築家トップ > コラム > 第1回 シックハウス > 素材の特性と住まい方のバランス

第1回 シックハウスについて
・・・素材の特性と住まい方のバランス・・・
藤原工務店1級建築士事務所 丸山利典


「シックハウス」という言葉が広く知られるようになって随分になります。新建材や工業製品に囲まれた暮らしの人体に与える悪影響がそれだけ顕在化してきたということでしょう。家は毎日の生活をする場ですから、 その環境は食事と同じように健康に影響するだろうということは何となく理解できますし、気にもなります。

シックハウスで話題の化学物質だけをことさらに問題にしなくても、日当たり、風通し、振動、騒音、匂い、 と自然界の多くの要素もまた、五感を通じて人へと伝わります。 これらに何とな
く感じる第六感、オカルト的なものまで加えると、健康へ影響を及ぼす要素は際限がありません。オカルトはともかく、化学物質はもちろん自然素材に至るまで、実際にはあらゆるものが人体に影響を及ぼすわけですが、化学物質による人体への影響ばかりが注目されて増えるのが、自然素材万能とばかり、信仰にも近い「信仰型自然派」ではないでしょうか。

確かに自然素材が人間に良い点はいっぱいあります。でも、自然素材も万能ではありませんし、自然素材で あるが故の癖もあります。 手入れを怠らないとか、それに対応した暮らし方を心がけるとか、付き合うにはそれなりの覚悟が必要です。 例えば、人体に優しいといわれる素材は小動物にも負荷が少ないはずで、そういった素材で建てられた家というのは、そもそも虫や鼠などにも住みやすい家ということになります。虫や小動物と同居はイヤだけど、薬品や新素材の人体への影響も心配だという方は、昔から行われていた掃除や虫干しといった人類の知恵に頼るしかないはずですが、はたしてそれが可能でしょうか? そんなことが面倒だという方のために開発されたのが、メンテナンスフリーとか謳われている新素材群で、これに頼り過ぎた結果がシックハウス。自然素材にしても工業製品にしてもオールマイティなものは無いということを知り、それらとうまく付き合う生活スタイルを自分で身に付けることが肝心ではないでしょうか。

例えば「浴室」を考えた時、掃除の大変さを考えれば工業製品の方が便利ですが、肌が感じる自然素材心地よさも捨て難い魅力です。そこで私達のところでは、様々な技術的工夫は必要になりますが、浴槽や洗い場はユニット、壁は木というように自然素材と工業製品を適材適所組合わせた浴室を御提案し、とても喜んでいただいています。

住宅を構成する素材がどんどん工業化されてきた背景の1つには、忙しい現代生活を送る住まい手側の 「手間をかけない」といったメンテナンスフリー工業製品へのニーズもあるように思います。けれど最近、それが健康生活をおかしくしているらしいということに多くの人が気付き始めました。 これを修復しようとするなら、そのような変化が始まった時点、その岐路となった時点に一旦立ち戻り、現代の生活環境との違いから考え直してみる必要があるように思います。 そうして考えてみると、進歩・発達してきたと思ってきたこの何十年かの歩み、時間は何だったのでしょうか。

気になることがあります。 健康で快適な暮らしは、基本的には自分達の暮らし方、ライフスタイル全般を通じて得るものかと思うのですが、どうも最近、強制換気システムや24時間空調と
いった、機械による環境のコントロールこそが抜本的解決方法であるかのような風潮が広まりつつあるようです。 それでは根本的には今までと変わらない場当たり的な対処療法の延長線上ではないでしょうか? 今新 しい岐路に立って、また誤った方向へ踏み出し始めることのないよう、改めてライフスタイル、住まい方から見つめ直す必要がありそうです。  
   
  藤原工務店1級建築士事務所 http://www10.ocn.ne.jp/~dongoros/
 
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