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第1回 シックハウス
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・・・シックハウスと今の生活
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天野秀一 建築研究所 天野秀一
シックハウスの問題が、マスコミ等に取り上げられるようになって10年近くが経ちます。
シックハウスとは「有害な化学物質で室内空気が汚染された家」のことで、 ここで問題となるのは、これにより引き起こされるシックハウス症候群であり、 また化学物質過敏症です。現在これらの潜在的な患者は、50〜100万人いるといわれています。
国がこの対策に乗り出したのが96年頃で、昨年(2003年)の7月1日に建築基準法が改正され、 やっと法規制が始まったというわけです。それは、人体に悪影響を及ぼす化学物質についてとりあえず13種類を選び、 それらに規制値を設け、それを満足するよう発生源である「建材」と、汚染された空気を除去する「換気」を2本柱に対策を講じています。
まず、有害な化学物質の発生源となる「建材」について考えてみましょう。
60年代あたりから新建材と呼ばれる化学物質を含む建材が流通し始めました。 これらのほとんどは、丈夫で扱いやすい上、大量生産できるため均一な品質で、 しかも安く手に入るということで急速に普及しました。 有害な化学物質のことを除けば、これ自体なにも悪いことではありません。 建築がひとつの産業として成立する過程でもあったのです。 建築の工法も、土壁を塗ったりする「湿式」から、新建材を張りつける「乾式」に変化していくことになりますが、 これも産業として考えれば当然の成り行きなのでしょう。 化学物質を出すのはなにも新建材だけではありません。 天然素材も化学物質を出すことがわかっています。 たとえば、木のムク材からもホルムアルデヒドが放散しているそうです。 また建材だけではなく、家具や日用品からも有害な化学物質は出ています。 食べ物や外気のことも考えれば、わたしたちは化学物質により包囲された住環境にいるといえます。 近年の法規制により、有害な化学物質を含む建材の使用は少なくなりました。 しかし、それは良いのですが、もっと根本的なことを見直さない限り、安全で快適な住環境が確保できないのではないでしょうか。
では、次は「換気」の問題です。
新建材が今と同じ程度多用されていた70年代、80年代に、 化学物質による室内空気の汚染があまり問題にされなかったのは何故でしょうか。 それは今よりもずっと隙間の多い住宅であり、エアコンも今より普及していなかったからと考えられています。
要するに、自然に換気ができていたのです。日本は東北・北海道や沖縄を除けば、一年を通じて温暖な気候に恵まれています。 そして、ひとは昔から少しでも快適に暮らせるように、住宅や生活に工夫を凝らしてきました。 深い軒の出、取り外し可能な襖や簾(すだれ)、打ち水等、自然を拒絶するのではなく、 自然をうまく取り入れた生活を長い歴史でつちかってきたのです。 それが、建築が産業として成立し始める30〜40年前から、人々の関心は自然よりも人工的な環境による快適さに向かっていきました。 窓を少し開ければ涼しい風が入ってくるにもかかわらず、部屋を閉め切ってエアコンで快適な環境をつくろうとします。 省エネルギーが取りざたされると、エアコンの効率を高めようと、断熱や気密性の高い住宅が要求されるようになりました。 言い換えれば、外の自然とまったく隔絶した環境が住宅に求められるようになったのです。 それをどれだけ満足しているかを住宅の価値基準することにまで国を挙げて推進しているのが現状です。 部屋を閉め切って気密性を高めれば、新建材から発生する有毒な化学物質が充満するのはあたりまえの話です。 時々窓を開けて換気すればいいのですが、それではエアコンの効率が悪くなるという理由で、 電動式の換気扇を24時間一日中まわさなければなりません。今の日本の住宅はこのようになってしまったのです。
さあ、どうでしょう、どこかおかしいと思いませんか?
暑ければまず窓を開け放して、風を入れてみましょう。風がなければ、打ち水をするだけでも涼しさが演出できますよ。
寒ければストーブをつけますが、1時間に1回は窓を開けて新鮮な外気を入れてみてください。 冷えた空気が部屋に入る時、対流をおこして部屋の暖かい空気が隅々に行き渡るのを体感することでしょう。 管理された人工的な環境が避けられない社会生活で、少なくとも自分たちが日々生活する住宅だけは、 自然と共生できる人間らしいものでありたいとは思いませんか。
天野秀一 建築研究所
http://www.sa-ra.biz/
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