あまりに稚拙と思われる少年(少女)犯罪や、極めて残虐な犯罪が増えています。 キレやすい子供やあまりに稚拙な子供による事件。誰でもよかったという通り魔的な事件。理解できる範囲を超えた突然の家庭内での殺人事件など。 また、何故あの子が?というケースがあまりに多くなったようにも言われています。 その背景には、アニメやテレビゲーム等の成長期における影響や自立心の欠如、社会や家庭からの疎外感といったものが共通してあるようです。 私も子供を育てる一人の親として他人事ではなく、これらの事件は痛ましく思うと共に事件を聞くたびにその背景について色々なことを考えさせられます。 また、単に子を持つ親としての心配だけでなく、このような現象を作り出した社会の一員として何かを改善しなければ、役に立たなければと思うのは、ほとんどの人が感じていることでしょう。 教育者ではない私が子供たちの為にできること。 それはあくまで日常の仕事である「家づくり」や、身の回りの子供たちとの日常生活、それとこのように何らかの形でもメッセージを送ることかと思っています。 子供の育成を重視するための住まいづくりに関しては、ミサワホームがかつて調査を行い提唱した「天井の高い家」、近年提唱されている頭のよい子(?)を育てる為の「オープンな間取りの家」といった考え方があります。 これらについては私も肯定的に考えていますが、それ以上に私が気にしていることはもっと根本的な「住まいの間取り」「子供の居場所(部屋)の位置」の問題です。 近年の多くの住宅やマンション、社宅などにおける子供部屋は、玄関に隣接したような「子供は勝手に出入りしてもいいよ」と言っているような位置にあります。 子供部屋としてもともと想定されていなくても、このような場所の部屋を子供室としている、或いはそのようにせざるを得ないというのが現実だと思います。 これは、1階に玄関があり、玄関脇に階段があって、2階にあがるとすぐに子供部屋があるといった戸建て住宅でも同様で、分譲住宅などによくある典型的な間取りではないでしょうか。 これらはいずれも、子供部屋は家族の集まる場とは孤立した関係にあるものです。 昔ながらの社会との接点でもある「庭」を失いつつある今日の住環境の中では、「玄関」が住まいと社会との間の接点です。 その接点に一番近いのが、親ではなく子供であるというのは、何ともおかしなものに思えてなりません。 つまり、今日の多くの住まいにおける子供の居場所は「親に守られた場所」「家族と共にいる場」ではないように思われて仕方ありません。 ほとんどの場合、そのような事は意識はされていないでしょうが、悪くいえば「親から放置されやすい場所」と言えるものだと思います。 親の目が気になりすぎる家も問題があるでしょうが、両親との関係と子供の独立性が、程良く反映された位置関係をもつ家、子供を守る位置で子供が育つ家は、子供にとって、家族にとって「良い家の条件」のひとつと考えます。 また、日中に家にいる時間や部屋にいるのが長いのも子供たちです。 親の寝室よりも客間よりも、場合によってはリビングよりも、日当たりや家全体の中での位置、環境のよい場所(過保護な場を与えるというものではありません)に子供の居場所を設けてあげたいものです。 もちろん住環境だけで全てが解決できるはずはなく、あくまで「そこで如何に住まうか」「家族の関係が如何にあるか」が大事な問題です。 「住環境という生活の背景」をどのように用意をしてあげられるか。 これが家づくりを手がける設計者として、私が子供たちにできる一番の職務のように考えています。 当方のブログ「家づくり設計者の日常」 http://atelier-n.tea-nifty.com/blog/ 内の「子供の居場所(部屋)と犯罪防止」より、一部文章を修正して掲載させて頂きました。
写真:リビングと中庭を挟んで向かい合う子供部屋(市ヶ谷の家)