増改築によって生じた、様々な問題点
ガウディは建築作品の管理について
「建築家は、<<作り方を知っている>>工事職人を利用することを知らなければならない。それぞれの優れている部分を活用し、それらの力で行き詰まったときには、完成度をたかめるのに、総合力で解決する。
この様に安心して仕事ができるように、施主に対して完璧な信頼を受けることである。
(全てが同じ能力をもってはいないので)更に皆に役立つ術を理解してなくてはならない。問題はそれぞれが何の役に立つのかを知ることである。」という。
つまり建築をつくるには、協力者達の特徴を最大限に引き出しながら彼らを理解し、なおかつ総合的な解決策をもっていなくてはならないということを示唆している。
ようするに、物事の理解力と応用力を高めることを薦めているのかなという気がする。
コーナー・ベンチのあるバルコニーの出入り口外壁にはひまわりタイル風の絵が描かれているのだ。
なぜここだけがレリーフ・タイルを利用していないのだろうか。
バルコニーの出入り口は他の出入り口と比べて狭いことから、できるだけその不便を感じさせないための配慮なのか。それともここだけがガウディの管理下のものではないのか。
ポーチを抜けて玄関に入ると、半地下階と屋根裏部屋に連絡している小さな螺旋階段がある。この螺旋階段は狭いが、地下階と屋根裏部屋に連絡している。
その中央の扉を通り抜けると南側に面して二つ正方形に納まるトラック型のサロンがある。
その周囲は廊下で囲われ各部屋に連絡している。
ところがこのサロンはガウディ当時からのものではない。
まだ伝記作家達による記録から想定するしかないが、一番有力なのはこの場に温室があったという説である。
現在ではガラス張りの食堂サロンになっているが、以前は寝室になっていて温室ではなかった。1986年には、事業家アントニオ・ディア氏の依頼によって、サンタデールの建築家ルイス・カスティージョが温室風のレストラン食堂サロンとして改修をした。
この改修ではガウディ建築のスタイルを検証したというより、レストラン用サロンとする増築計画にした。結果として地下の厨房とトイレへはこの場所を通り抜けるしかないという不便さがあり、このサロンの真ん中で動線が交差するということが生じている。つまりウエイターによる料理運搬とトイレ利用客がこのサロンで交差してしまう機能障害を起こしている。
これを解決するにはアクセスを変える必要がある。
温室の建築ディテールに注目する。
エル・カプリチョの屋根の棟飾りはレリーフ・タイルによる立方体仕上げになっているが、温室風サロンの棟飾りだけは、お供え餅のように段状に積み重ねられている。しかもガラス張りの壁と屋根のガラス張りによる明かり取りは、日射の他に通気が考慮されていないために、暑苦しくサウナのような密閉されたクリスタル・ルームと化している。
このような温室的見せかけの増改築により、オリジナルを尊重しての増改築にはなってはいないだけでなく、建築本来の機能に欠ける結果となっている。 |