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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

廃材を利用することで美しさを妨げない

ガウディは、科学について
科学は、ときとして金塊のように非常に重く利用しにくいが、操作はできる。 芸術を分類し、取手をつけたりして利用しやすいようにする。芸術は科学を豊かにする
と記している。

ガウディも科学と芸術の狭間におかれた立場の建築家である。その中で自然と対峙した時、建築にする場合は現実の日常生活と向き合うのは明白であり、具体的なアイディアを芸術的な立場から産み出し、それに従って科学によって裏付けをするというようなことを示唆しているのではないだろうか。
既成概念を超越できるイマジネーションの世界に委ねられた芸術から、科学や技術が進歩するということなのだろうか。
たしかに昔はフィクションで語られたり描かれたりしていた事が、今では現実になっていることは否定できない。そのような社会現象をこの言葉で表現しているようにも思える。

芸術を現実化する過程において、グエル公園の多柱室の天井に見られるメダルのデザインは、19世紀末芸術の特徴である抽象的で曲がりくねったラインのレリーフになっている。この作風は、ジュジョールの計画によるカサ・ネグラでも同じようなラインが見られる。それが彼のサインにもなっているのは興味がある。またジュジョールの作品でも廃材を利用し、破砕タイルで演出されている。その廃材利用に関しては既にガウディがフィンカ・グエルで実施している。
ここでジュジョールの廃材利用とガウディの廃材利用の大きな違いはどこかというと、ジュジョールの廃材利用は遠くから見る分には差し支えないようだが近づいてみると鳥肌がたつように気持ちが苛立つのは不思議である。
ところがガウディの廃材利用は,洗練されていて傍に近づくとむしろ触りたくなるような表現になっている。
このグエル公園でも、壁面の破砕タイルや中央階段の架空動物の噴水ではビジターが傍で写真を撮ったり、触ったり、跨ったりするくらいである。最近では役所のセキュリティーによって管理人が傍にいて、少なくとも登れないよう見張っている。
その他にもコロニア・グエル教会地下聖堂、カサ・バトリョ、カサ・ミラでも見られるようにファンタスティックな廃材仕上げになっている例もある。
このようなリサイクルのアイディアはどこからくるのだろうか?
素材を優しく表現できるのも作家の配慮と演出からであることは間違いない。
素材で想い出すのがグエルの事業である。彼は、この公園の敷地を購入した時にすでに湧き出ていた地下水を成分分析する。それでこの水が健康に良いということがわかり、グエルは「サルバ」という名前でその水をボトルに入れて商品化していた。
そこでガウディは、その水の特性を演出するかの様に「青銅の蛇」をデザインして中央階段の正面に添える。この「青銅の蛇」は聖書に登場する動物であり、「モーゼの杖」を演出しているということをバセゴダ博士は説明している。ガウディは、それについては説明していないが、聖書を毎日のように目を通している人にとっては普通にイメージできるものなのかもしれない。

     
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