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建築家トップ > バルセロナ便り > 第337回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


ガウディにとってのサステナビリティ

ガウディ・コードの論文を執筆中である。
最近になってガウディの建築計画で特異性についての検証をしていた。
素材の利用の仕方、そして環境問題としてのサステナビリティーを重視した計画になっていることにも気がついた。中でも通気、採光、そしてリサイクルの配慮に当時としては時代の逆を走っているようにも見えたがそのあたりがガウディの特異性であるとみている。
例えばグエル別邸での通気問題はどうなっているのか。馬小屋に関してはアーチの越屋根部分での採光と通気とを考慮してのことであるが、空気の循環経路が明確ではない。調教場においては馬車が通り抜けることができるような幅3.3m×高さ4.5mの鉄骨格子にガラスはめ込みの扉も付いている。出入り口と木製扉の2箇所の出入り口をつけている。さらにキューポラの中央天井は採光用の天窓としての越屋根が付いているがこの窓も馬小屋の天窓と同じようにフィックスになっている。通気・換気は基本的に調教場の大きな出入り口によってされているが、当時の馬が飼われていた頃には小屋の天窓も開閉ができるようになっていたのではと思える。

グエル別邸の構造体は基本的にタピアール工法で作られていることから、壁厚は90cm以上はある。従って遮音性は抜群であり温度もほぼ年中一定に保たれている。実際にはその馬小屋は1977年以降、カタルニア工科大学の高等建築学部のガウディ研究室となっていた。そこで研究を毎日続けていたバセゴダ教授は冬になるとガスストーブを足元に研究を続けていたことを想い出す。夏場は、空調システムなど必要としない快適な内部空間であった。
サスナビリティーという言葉を最近よく聞かされる。これは継続とか維持の話であるどの分野でも通用する総合的な維持を定義している。その意味ではガウディが教会建築を実施する上で「より理想的なゴシック建築の希求」という言葉で示されているのは有名である。
この意味も含めて素材、環境、耐久性を考慮して総合的な配慮をしていたガウディは、芸術家としてのその具体的な思考性・定義づけを建築家となる前の1871年から進めていたということになる。従ってより優れた居住空間を求めながら環境保全の大切さをガウディは自らの作品をもって示している。
それをどのように建築作品から読み解くことができるのかということを私は実測と作図を通して見つけられるようになってきた。従ってこの配慮は世界にとっては必要な心がけとして次世代に向かってその展開と啓蒙運動を継承させる必要があることを感じさせられている。しかもガウディ・コードを探求し始めてからよりその重要性を感じ取れるようになってきた。

その意味では初めてガウディの作品を見た時の印象と現在ではガウディの作品の見え方が全く違うことに気がつかされてきた。それが単なる芸術とか建築とかいう言葉だけではなく世界に共通する、または通用する配慮をガウディがしていたということなる。
     
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