江別、そしてリウドムスに ガウディのエッセンスを再生
煉瓦による彫塑的な放物双曲面体の本家であるガウディは、その煉瓦を利用して面白い階段室をカサ・ミラで披露する。
その階段室や煙突から、時によっては未だにガウディの口笛さえ聞こえてくるような気がしてならない。
そこで私は、ガウディに「待った」をかけてみる。
そして………
「ガウディさん、私がデザインした江別のスズラン・ボベダを見て欲しい。これは、貴方の構造概念からヒントを得て、北海道のアイデンティティ?とさらに日本に本格的なスペインの伝統的な煉瓦工法を導入する意味で、日本の器用な職人さん達との合作で施工してみました。貴方の不思議な建築をこれで少し、日本人にも自らの目で見てしかも触れられるようにしてみました。評価は色々あると思いますが、私は貴方の意見だけが聞ければそれだけで幸せです。」
この構造要素はまさにカサ・ミラのこの階段室からヒントを得て、ガウディが自ら試みる事になったカテナリー回転体を5つ集合として、さらに強度を高める柱と逆さアーチの合成で考案した。その構造概念はまさにアーチにつきもののテンション材導入を拒む為の解決策として提案してみたのである。
それが見事に成功した。
しかも内部空間はボールトになっている為に、ドーム特有の適度な音の反響も、小さな空間ではあるもののスピーカー的な役目を成し、さらに、雪や雨しかも風にも抵抗できるような形である。すでに3年目に入るが未だに雪の中から土の洞窟が盛り上がった光景も見せてくれる。
私にとって、カサ・ミラの階段は不思議な愛着を持たせてくれる。
その階段を計りながら、居室空間内部の間仕切りに合わせるかのように円形パティオとトラック型のパティオには、それぞれ蛇行した階段が設けられる予定であったことも解ってきた。
実際には一部オーナーの住宅部分に連絡するところまでになっている。
その不思議な階段計画は途中で断念して中央パティオの主要階段はオーナーの住宅までとなり、他の階への階段は別に境界壁に面したところに移動している。
これよって借家人達のアクセスはオーナ?と分けられることになり、その解決は機能としてだけの処理になっているのである。
従ってガウディ当初の蛇のようなうねりの姿の階段は未完成となった。
そんな階段の必要がどうしてあったのか?という疑問が残った。
さらにガウディに問いかけてみる。
「今度は、貴方の生まれ故郷リウドムス町に、現在の町長さんからの依頼でデザインしたアルブレ広場の改造計画が実施になっております。つきましてはその広場がカタルニアの守護聖人であるサン・ジョルディの日の前日4月22日にオープニングします。
これも貴方のデザイン性を、私が勝手ではございますがたっぷり年数をかけて直接建築作品に触れながら勉強させていただきました。
その経験を生かして貴方のデザイン・エッセンスをリウドムス町に再生できればと思いました。貴方がリウドムスの人達に残した言葉で、『私のものは貴方達のものです』という昔のフランス剣豪小説『三銃士』の合い言葉に似た言葉を思い出しながら、さらに日本人の心と協力による成果で、貴方の気持ちを具体的な形で表現する場ができたのではないだろうかと思う程です。
是非その成果を見ていただき貴方の感想を聞かせて頂ければと思っております」。 |