敷地は大阪府豊中市の市街地に新しく区画整理された地域の一区画である。計画時点では近隣はまだ更地で、間もなく住居が建ち並び新しい街並みが予想されたが、北側の敷地のマンションから見おろされるという不安要素もあった。要望としては外部空間を活かした開放的で快適な住居を望まれたが、周辺環境のことを考えると、プライバシー、セキュリティ等の観点からも単に開放的なだけの住居とするには不安が残る敷地環境である。
■ 大きな“三つの扉”を設ける。
この住居は、北側を背にしてコの字型に“中庭”を囲っている。“中庭”は街路に向かって大きく開いたり、閉じたりできる。街との距離感を調節し、扉の開閉による空間の変化を取り入れる。開放感の調節(装置)は、“中庭”と街路を仕切る木製(レッドシダー)の大型引扉、また門にあたるアプローチの入口にある木製(レッドシダー)縦軸回転扉で行なう。さらに居間と“中庭”を仕切るアルミ製のワイドオープンサッシを引き込むとリビングと“中庭”とが一体化したスペースとなる。この開閉可能な装置として“三つの扉”があり空間の性質を大きく変化、またコントロールしている。
■ 性格の異なる“四つの庭”を設ける。
魅力的な半屋外的なスペースを実現するため“中庭”だけではなく“空庭”“光庭”“坪庭”の大小四つを場所の性格に合わせて配置した。“中庭”が開かれている時、街路からは水盤が見える。水盤は街並に対して大きな演出効果を持つと同時に、外部からの進入を容易にさせない結界ともなる。“空庭”に降った雨水は“光庭”の石臼に落ち“中庭”の深さ50mmの水盤に注がれる。雨の日、視覚と聴覚で“中庭”を楽しむ事ができる。また浴室に面した小さな“坪庭”はプライバシーが保ちながらも開放的なスペースとなる様に設けた。
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