ステンドグラスの色付けに、複雑な工程
ガウディは、「人生は会話である。誰かが勤めることで人が来る。教える人、学ぶ人、それには場所が必要である」といっている。
職人の教義は、現場にあるということも彼自ら語ろうとしているようにも感じ取れる。
つまり、現場無くして建築技術は発展しないという事を、彼の協力者でもあった建設業者のホセ・バイヨ・フォンの言葉から伺う事ができる。
ならばなぜ、ガウディはあの重ね合わせるような面倒なステンドグラスを計画したのだろうかということになる。
通常ガラスに着色する場合は、金属酸化物をガラスに混入させて着色する。私も自らガラスの工業製品をデザインした際、コバルトを入れた原色のガラスを見せてもらったことがある。コバルトでは、その分量でブルー系のトーンができる。通常クリソールというガラスの炉は摂氏1500度以上になる。それに耐えるだけの金属顔料でなければ色が再生されない。
ガラスに着色する方法は、色ガラスを重ね合わせて適正な色を作り出す手法と、単にガラスに色を塗っただけのもの、他に色を塗って焼き付けるという三種類がある。特にステンドグラスにおける重層ガラス手法はガウディの考案した手法と云えるだろう。
モザイク仕上げのようにガラスに色を塗ったカサ・バトリョの外壁仕上げの他に、コロニア・グエル地下聖堂ではガラス面に色を塗って焼き付けているというのである。
そしてマジョルカ島の大聖堂のステンドグラスでは、原色のガラスを重ね合わせて希望の色を作り出す手法となっている事は知られている。しかしこの場合、ステンドグラスの色によって厚さが異なる為に、職人泣かせとなっていたという。が反面、このステンドグラスに立体感を醸し出すことになるというのである。
それにしても厄介なステンドグラスである。
最近ではそこまでしなくても色彩の調整はできるようだが、それではガウディは満足しなかったのだろう。
つまり自然光を利用するステンドグラスの鑑賞の場合、自然光によってステンドグラスをより色鮮やかに美しく見せるには、その透過性と光の入射角が重要というのである。ガウディは45度の入射角でステンドグラスを鑑賞できる様に調整している。これを、ガウディは理想的な角度としてサグラダ・ファミリア教会のステンドグラスを計画していた事が解って来た。
この裏付けは光工学の研究が必要になる。
いずれにしても光がある限り、色も存在する。
影を落とす事で立体感や存在感を作り出すが、建築の場合は、そこに生活が関わってくる。
コロニア・グエル地下聖堂での彩色ガラスの為に、職人ホワン・ベルトラン(Juan Bertoran)、左官アグスティン・マシップ(Agustin Massip)の協力を得、ガラス面に色を塗った。
この左官はグエルの信頼を受けていた人で、コンデ・デ・アサルト(Conde de Asalto)のグエル邸、アストルガ、後にグエル公園、またホワキン・トレス(Joaquin Tres)の依頼も受けている。 |