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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第116回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

時間を忘れてコミージャス侯爵邸を見学

コミージャス町の南側に、ピコ・デ・エウロパが一望できる草原が広がるソブレジャーノ地区がある。
1879年に、その北側面にコミージャス侯爵の依頼によってガウディの師匠であった建築家ホワン・マルトレールがコミージャス侯爵邸と霊廟を計画し、ガウディの同級生であったクリストバル・カスカンテが現場管理をした。
建築スタイルはネオ・ゴシックで、天井はカタラン・ボールト下地に格天井である。
前回のエル・カプリチョ出張でこの侯爵邸を見学することができた。
玄関を入ってすぐに両脇に部屋がある。正面奥には中央サロンがあり、その手前両サイドの階段室である。現在では文化活動の一環として展示用に利用されており、中央サロンでは講演会などが行われるという。2階は寝室であり、素晴らしい格子天井とトリビューンになっている。最上階は食堂となっていて昇降機もついている。
この館は現在カンタブリア政府の所有管理となっていて、見学をするにはその文化部に申請しなくてはならない。

私たちはあらかじめ申請していたので、エル・カプリチョの関係者と一緒に侯爵邸の案内人ピラールが屋根裏階まで案内してくれた。
勿論一般公開されているところではない。

最上階からさらに木造の螺旋階段を上り、物干し場となっているという屋根裏部屋からさらに小屋組が見られる天井裏に案内してくれた。「コウモリがいる」というので最初はまさかと思った。部屋は建物隙間からの光が入る程度の明るさで、人の気配で一気にコウモリ達は飛び交っていた。
電気をつけてみると天井裏は小屋組としてレンガ造のゴシック・アーチがつくられていた。そこから鉄鋼のテンション材で格天井が支えられ、さらにカタルニア・ボールトによる下地となっている。最上階の床も大きなボベディージャというカタルニア地方特有のレンガ造による構造体である。
フラッシュをつけて屋根裏と小屋組の写真をとる。

また玄関口の方に降りて、正面奥の中央サロンにある素晴らしいステンド・グラスが貼られたオヒバルアーチの出入り口を出るとアンフィテアトロがある裏庭に出、その後霊廟に案内してもらう。
久しぶりにガウディのデザインしたベンチ、懺悔台、肘掛け椅子を見学する。

私は見学するというより夢中で写真を撮る。写真撮影に夢中となり、エル・カプリチョでの会議を予定していた時間が近づいてきた。仕方なく見学を切り上げることにしたが、案内人ピラールと友好関係ができたので今後また気楽に訪問できると思った。

さっそくエル・カプリチョにもどり喫茶室に行くと、すでに会議席が設けられていた。今後の文化活動内容と今後の運営上の話が始まる。私はエル・カプリチョの建築の方が気になっていた。
北側土塁面の緩い地崩れからなる舗装の地盤陥没である。
陥没を修復するには基礎の補強をしなくてはならない。さらに現在の粗石による舗装は、歩くのに危険で改造が必要であると実感している。秘書のルペからも今までに人身事故もあったと聞いているくらいだから改造は無条件にしなくてはならないと思っている。
それにはかなりの予算がかかる。

   
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