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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

誕生の門の糸杉と白い鳩

ベルゴスとの会話でガウディは、「仕事は協力者の成果であり、彼らの愛によるもので、憎悪を生み出すようなことは避ける必要がる。例えば火をつける為に、乾いた枝を邪魔となる生の木や緑から分けるようなものである。そして焚に火がついたとき、僅かの緑を入れる。
仕事の危機には、その要因となる悪い職人の追放などの選択によって、新しい火種となる」
といっている。

ガウディの時代にも今と同じような社会問題があったのだろう。
仕事の合理性よりも自然の流れにそった楽しめる作業として、さらに協力者も自ら納得できる環境や計画となるように考え、その中でガウディの作品がつくられていたのではなかろうか。
その建築の演出において、動物達の登場はなんと自由な表現になっていることか。

サグラダ・ファミリア教会の亀やカメレオンなどのフィギュアは装飾というより、「樋」という建築機能として利用されている。玉を口にした(リンゴをくわえた)蛇はキリスト誕生のシーンを演出する為の舞台を支え、その姿がアダムとイブの時代に登場する動物の表現であったりガウディのメッセージであったりする。
ロマネスク芸術では、文盲の人々にフィギュアを通して人生やモラルのあり方を示していたとされている。

ガウディの初期の作品では、動植物達の姿が建築作品にリアルに表現されるが、それは単に彼の趣向による動物園を建築に表現しているとは思えない。つまりガウディのウイットによる動植物達は、地域やオーナーとの因果関係を持ちながら、建築の中で、さらにモラルや社会的なメッセージをもたせていることにもなる。
私にとっての楽しみの一つは、このようなガウディ・センスに触れられることで、さらに古文書、歴史、民俗学、象徴学、社会、など広範囲にいたる関係事項を紐解くことで、ガウディの真意にアプローチできるような気がしてならない。

たとえば、彼の作品で代表されるサグラダ・ファミリア教会、誕生の門の中央上部では糸杉のモチーフに白い鳩が載せられている。
これはまさに中世建築にもよく見られる、聖書に基づくハトのモチーフであることは疑う余地もない。キリスト教の宗教建築であるからこそ当然のモチーフとしてよく利用されていたという事になる。糸杉もキリスト教の社会では「生命のシンボル」として利用され、実際に教会やお墓などの周辺にその糸杉が植栽されているのもその所以でもある。
教会の周囲に糸杉を植栽することは風習であるとしても、その植物を建築の一部として化石化させることにどんな意味があるのだろうか。

「誕生の門」ということから「生命のシンボル」として中央に表現しているのか、それとも「生と死の極限」をこのシンボルに秘めさせたのか。

どちらにせよ糸杉の頂点には十字架が置かれ、その下にハト達が群がった糸杉の表現をしている。
「誕生の門」では、他にもシュロ、ヒト、天使、木、亀、カメレオン、蛇、鶏、ロバ、ペリカン、マツボックリ、カニ、ライオン、羊、雄牛、バラ、化け物、半身半魚、半身半爬虫、と抽象化された架空の動物達も含めて単に装飾だけということではなく、建築機能も兼用しながら社会へのメッセージを込めていることに驚かされる。

   
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