建物における屋根の役割
ガウディは屋根の概念について
「屋根は良くあることだが小さくしてはならない。
なぜならこの部分は建物でもっとも高い部分であり、視覚的にも小さくなる。
その部分は監視と保護の為のアクセスが必要である。
さらに場合によっては背景が暗い(たとえば森)こともある。
常に空が背景となっており反射が塊りを打ち消してしまう。」
としている。
私がワークショップで南米を視察したとき、屋根のない家を見た。確かに人は住んでいるのだが、全部の部屋には屋根がかけられていなかった。
最近では、屋根を作るのに煉瓦によるプレファブを考案して市販しているスペインのメーカーもある。こうなると工期も短くなる。さらに煉瓦だから耐火にもなるので今後の普及が期待されるのかもしれない。
ガウディが考える屋根というのは、「人々も雨や直射日光を避けるために帽子を被る様に、建物もそのような処理が必要である事」を唱えている。
屋根のついた建物というのはランドマークになるほどの要素をもっている。
だからその形や合理性を損なってはならないということも言える。
「何でも良いから内部の生活空間を確保すれば良い」という安易な考えの人達も多いが、それでは地域の顔を台無しにしてしまうということにもなる。
どの世界でも地域で生活している場合は、複数の人達があつまっているわけだから、その辺りの気遣いも必要であることぐらいはコモン・センスである。
ガウディがサグラダ・ファミリア教会付属小学校のためにデザインした屋根の形は、まるでシャコガイのような波の表現になっている。シャコガイに関しては、当時のパトロン、 グエルの親戚であったコミージャス侯爵が旅先フィリピンから運んだものだというが、コロニア・グエル教会地下聖堂やサグラダ・ファミリア教会の地下礼拝堂の聖水器として利用されている。
そのようなシェル構造は建築構造において理想的と言えるのだろうか。
私は、そのような構造コンセプトを利用して、試しに北海道の江別セラミーク・アート・センター前に煉瓦だけによるモニュメントをデザインした。日本ではまだ誰も試みた事がない煉瓦だけによる四辺鞍型ボールトである。 愛称は北海道で作ったので、地域のアイデンティティーを生かしてスズランの名前をつけた。しかもボールトの形はスズランの花の形にも似ている。
この構造体を作る事で何が解ったのだろうか。
まずは施工面でガウディの利用した方法をそのまま採用してみた。するとカタルニア・ボールトの合理性を観察する事ができた。
それだけではない。工期も短くて済んだ。しかも防水層は必要なかった。雪も積もるがすぐに落ちてしまう。つまり煉瓦の熱伝導率がトタンと比べて低く保温性もあることから、積もった雪はその場に凍結しにくいという事が考えられるが、あとは専門家達の科学的データーが必要である。
ガウディが利用した煉瓦工法は、基本的に3枚の薄い煉瓦(15mmの厚さ)ラシージャを三層にし、しかも目地割りをすることで面としての強度を高めている。
さらにシェル構造のような面は放物双曲体となり荷重を全て圧縮力に変える形となっている。 |