建築の伝統と流行
ガウディは考古学的ではない建築について
「初めはものの関わり方である。つまり場所によっては、その形を模倣せず、その精神を掴み任意の性格を持ったものを作ることである。それはだれでもできることではない」
としている。
たとえば地域の中心には庶民のシンボルとなるものがあり、その周囲に生活環境が築かれるというのが都市の基本形になっている。それが教会であったり、神社であったり、近頃では駅やショッピングモールであったり時代に応じてその核が変化している。そこで地域のかかわり合いを知る事が不可欠という事になる。
つまりスタイルはその核に応じて変わることになる。
ここで伝統、流行という2つのスタイルの違いを見る。
伝統は幾世代も通して利用されて伝統様式となる。ところが流行(モダーン)はその伝統(トラディショナル)的なスタイルよりは継続期間は非常に短い。
例えばゴシックは12世紀から17世紀の500年とされているが、モデルニズムは19世紀末から20世紀の初頭までの40年間、そのあとにくるアールデコなどは1920年代から1940年代の20年間とされている。期間においては多少のずれはあるかもしれないが、そのスタイルの流れというのは社会や文化の影響を受けながら変化するものである。
伝統的な建築というのは、むしろ教会建築のあり方を示している事が多い。確かに時代にそった最高の総合芸術と技術が投入されるのだから当然のことである。そこから派生する、時代に応じた流行が現れるというのも不思議ではない。
優れたものを見る事で人々は悦びを感じ、それを生活に取り入れようとするのは世の常である。時代の先取りをしたかのような感覚で、ある種の優越感さえ感じるのかもしれない。
流行というのは、たとえば歌手のマイケル・ジャクソンが歌いながら腰をふればファン達や他のアーティスト達も腰を振りはじめるようなもの。これも分野は違うが一つのファッションとしても見る事ができる。
だからといって少しでも多くの人に見てもらう為に「建築にも腰を振らせる」と問題が生じる。建築は人間以上に寿命が長いわけで、一時の流行を先取りするかのような「奇異を狙った建築」にできないわけではないが、避けるべき行為であるということはガウディも指摘している。つまり、そこは世代を超えた不特定多数の人達が利用するところになる。一部の世代層だけを対象にした建物にする事が、逆に支障をもたらすこともある。
たしかに用途にもよるだろうが、教会建築の場合には聖なる家という事から節度が必要だという事なのだろう。
グエル公園におけるギリシャ建築様式というのも実は、エジプト文明にはじまりギリシャで花咲く神殿造りの手法を定型化したドリス、コリント、イオニア、トスカーナ、コンポジットといった五つの形の一つである。 ドリス式というのはシンプルな建築詳細を納めているが、それをベースとしてグエル公園が築かれる。
このドリスは何を起源にしているのだろうか。 ギリシャ神話に登場する神の娘達妖精ニンファの中の木の妖精ドリュアスからきているという。 |