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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

ガウディの考えるモデュール

ガウディは
「人生は戦争である。戦う為には力が必要である。力は徳で、それは自ら支え向上精神によって蓄えられる謙虚さの実践でもある」。
とベルゴスとの会話で人生観を述べている。

今までも私はガウディが残している言葉を紹介してきたが、どうも宗教性の言葉の前に倫理的な行為について述べているような気がしてならない。例えば献身、苦行、徳性、忍耐というような言葉が彼の会話に現れる。私はスペインでの生活からそのような倫理観は西欧人には存在しないのではと思っていた。
ところがガウディは頻繁に口にし、この言葉に固執し自ら実践していた。
彼はスペイン人でありカタルニア人でもある。カタルニア人というのはそのような倫理を持ち合わせた人種なのかと思う事がある。勤勉、質素、堅実という言葉が似合いそうな人種というのは、スペインの中でもカタルニア人に聞かれる評価である。
確かに産業は、スペインの中でも2次産業、3次産業が抜きん出でている。1970年代にはアンダルシア地方から出稼ぎが多く集まり、人口も3倍ほどに膨らんでいる。
現在世界中におこっている経済危機は別として、温暖な気候に衣食住の不足がない地域で、ストイックな言葉がどうしてでるのだろうかと考える。

日本では普通に聞かされている言葉である。そのような行為も風俗習慣から培われた生活の一部として自然に取り入れられてきた背景には、四季折々の厳しい気候風土に耐えるための知恵が言葉となってのことだろうと見ている。
「宗教の前に倫理」ということを示したのは、本来人々が集まったときに秩序が必要となり、もっとも基本的でむしろ本能的な行為と思うからである。
それがやがて規則や信仰を導き出し、生活のメカニズムにも役立つようになる。
つまり共存をスムーズにするための潤滑剤となり、ルールにも変化している。
やがて文化が開花しはじめ成長する。そして科学や芸術を進化させ、さらに産業を産み出す。このようにして都市の発生を概念的にとらえたとき、生活環境をグローバルな視点から見ることの必要性を感じさせる。

そこでヨーロッパ社会のベースとなるヘレニズム文化をみる。
地域の神話が建築と化して荘厳さを産み出す。しかもその優れた建築技術の中で神殿のオーダーは、屋根を支えるエンタブレチャ、それを受ける柱頭と支柱、そしてベースとなる柱礎によって構成される。
ドリス式は支柱に縦溝があり、柱頭はシンプルな丸い枕で受け柱礎も同じく丸い座布団のようになっている。これらは支柱の直径をモデュールとして各部のサイズが決められている。それがプロポーションとなる。
つまり私達の体にもプロポーションがあるように、形あるものは全てこのプロポーションがある。
ガウディもまたこのようなプロポーションについて触れている。
例えば教会建築は、人間の体をモデュールにしているという。 
さらにそのプロポーションを設定する為の基準点を1.6mという視点の高さにして、建物の詳細を設定する。 建物が大きなものであれば遠近法によって詳細におけるサイズの調整も必要になるということである。
グエル公園の多柱室やサグラダ・ファミリア教会の彫刻群等でもそのシステムによって調整されていることは既述してきたが、そうすることでより自然な形で見えるようになることを知っていただきたいからである。

     
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