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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

遠近法を逆手に取った視覚の安定

ガウディは
無能な人間は,何も良くならないのでさらに臆病にさせる。そして臆病な人となる
と無能さと臆病についてベルゴスに説明している。
生活の中で予期しない事がよくあるものだ。
そんなことにいちいち気を咎めるようでは何も発展はしないということである。
何をするにも夢をもって前にすすむ事をガウディは示唆している。
グエル公園の多柱室では、視覚の矯正をしていることはあまり知られていない。
日常生活の中で遠近法を利用しなければどんなことになるだろうか。
極端な例として、同じ形の2つのモノで、奥のBと手前のAのサイズが同じであれば、奥にあるBは視覚的にも小さく見える。そこで奥のBのサイズを大きくすれば手前のAと同じ大きさに見せる事ができる。つまりAの手前で全体を見たとき空間構成としては平面的になるが自然に見える。
子供の絵をみるとその遠近法が取り入れられてないことがよくあることから、非常に楽しいマンガチックな世界を見せてくれる。
そこで建築を計画する場合、同じようにこの遠近法を取り入れることで水平性や安定性という見る側の感性と建築のあり方に信頼感を持たせる事ができる。
場合によっては、パラディオのような絵による遠近法でテアトロに利用される舞台装置から、実際に利用する居室空間での視覚的安定性を求めて、壁面に遠近法を利用した絵を施す事もある。
「だまし絵」や映画の特撮にも利用される。
グエル公園では、多柱室(サラ・イポスティラ)において列柱の納まりに遠近法が利用されている。 このサラ・イポスティラの柱の幅木部分を観察すると、中央入口からのその幅木と山手奥の柱の幅木の高さに違いがある。
これは設計ミスかというとそうではない。 むしろ作為的にこの高さを変えている事がわかる。
その理由の一つには、サラ・イポスティラの山手から海側に向けて傾斜させることで、床の水勾配になる。しかしそれだけではない。この幅木は偶然にも一番低い所ではガウディの目線の1.6mの高さである。 つまり一番山手の奥から地中海の水平線にめがけて一致するように見せている。 ただしその高さより低い人や高い人達はそのように醜い。
しかも列柱の配列に応じて東西を水平線とすると、その線にそってそれぞれの高さを揃えている事もわかる。
そうすることで中央階段から昇り切ってこのサラ・イポスティラに入ると、列柱の幅木が全て同じ高さに見える。つまり違和感がない受け入れやすい空間となる。
そこで実際に、もしその幅木が全て同じ高さであったらどうだろうか。

通常であれば床の水切りの事だけを考慮すれば山手側の柱幅木は低くなり海側は高くなる。 すると中央入口からこのサラ・イポスティラに入って来た場合に、視覚的には40mの奥行きがあるその列柱はまるで袋小路のように息が詰まりそうな空間となってしまう。ところが、当初の計画ではそこで朝市ができるように計画されたことで4カ所の柱が抜けた理由となっているが、住民が利用する室内空間であることから遠近法を利用する事で、視覚的に目障りな多柱室の特徴でもある閉鎖的な空間をより広い空間とするために、ガウディはその幅木を地中海の水平線の位置に合わせるようにして高さを調節した。
     
田中裕也氏プロフィール
 
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