無垢の木材によるアーチ構造
ガウディは木造建築について
「木造の秘密は動きにあり、湿気の吸収や吐き出しにある。解決としては直角の動きが重要でなくなるまで空間を細分割する」
とその特性をコメントしている。
つまり、木材を利用する時には気温や湿度に敏感なので、その動きを緩和させる為にできるだけ割り付けを細かくする軸組の事を説明しているような気がしてならない。
ガウディの木造建築としてはマタロ労働組合工場、カサ・ビセンス、エル・カプリチョ、グエル邸、サグラダ・ファミリア教会付属小学校等があげられる。マタロ労働組合工場の他はどれも小屋組や垂木程度の利用でしかみられない。
そこでマタロ労働組合の木造の仕組について見てみよう。
日本での木造は、柱と梁ということで規則正しく構成されているが、ガウディの木造はアーチを組む事で構造体を作る事を考えていた。さらにアーチのベース部分に煉瓦で壁を立ち上げ、屋根勾配に応じて軒高4.5mの所まで壁を立ち上げている。そこから棟の部分、つまりアーチの頂点部分までが垂木の長さとなる。
アーチとアーチは棟、桁、母屋で繋げられ、その上に垂木が載せられている。
垂木の鼻は○の段状しあげになっている。
木造によるアーチ構造は単にアーチ状に部材を切って繋げると言う事だけではなく、カテナリー曲線状にそのアーチがラチス梁のように組まれている。
厚さ80mm x幅220mmのような24cmの角材を三つ割にしたような部材をカテナリー曲線状に切って繋げている。まるでラチス梁のようにしてしかも三枚重ねで目地割りするようにして繋げる。繋では13φのボルト・ナットで、4カ所で繋がれている。
このアーチの特徴は軽量で組み立てやすいことから時間の短縮になる。
マタロ組合工場のスパーンは12mで、弦の高さは6mになっている。
ガウディは、木造で小屋組を使わずに一身廊の空間を軽々とアーチの躯体だけで作るデザインをした。
構造体はシンプルにし、アーチだけの構造体で処理しようとしているデザインとなる。ただ壁際ではアーチと垂木、そして柱で三角間ができるように組まれている。
ガウディの建築要素の一体化が伺える場面だろう。
ダビンチの場合は、丸太にほぞを作ってこの曲線に似たアーチを組み上げているが、ボルトや釘も使っていない。
これをきっかけに、木造によるアーチの組み方に関心を持ちはじめた。しかも無垢材を利用してのことである。
現在では木造の体育館や学校で、大きなスパーンによる木造の梁には集成材を使用しているのが見られる。 確かに集成材に関してはそれに似たような素材もガウディ当時に「Contraplacados」として考えられていたようだが、ガウディはまだそれを利用する気にはならなかったようだ。
現在でも手法とコストと時間に問題があるようだ。
そこで、従来の無垢材を利用しながらアーチを作る他の方法はないのだろうかと考えさせられる。
他に日本特有の瓦や陶器もある。その素材を展開させるにはどうするべきだろうか。
それで建築において最大限にその特性を生かすにはどうするべきか?
非常に楽しみな計画となる。 |