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建築家トップ > バルセロナ便り > 第224回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

最後の現場仕上げは職人を信頼し任せた

私の今までのガウディ建築の実測・作図の他に、世界のモニュメントの実測も合わせて一つ共通しているところがあることに気がついた。

建物をつくるというのは、基本的に地域の素材によって構築される。つまり人々はそれらの時代に応じた建造物の中で、さらに象徴的なアイデンティティーを演出させていることを実感させられた。
ガウディ建築や芸術を自然美として見た時に、その本質が見えているということを「余分なものがあってはならない」という彼の日誌の言葉からもうかがわれる。これがつまりガウディの審美眼であるとしたら、彼の作品を見る事が普通ではしにくいといわれるかもしれない。そこが見る側の検証の深さ次第ということになる。

ガウディが唱える美学の本質が、幾何学やコントラストにあると言うのであれば、彼の一連の作品においてはその幾何学がつまっているというのは作図をしていて実感している。コントラストについてはプロポーションに合わせた見事な黄金分割は勿論のこと、素材の美しさを熟知しながら地域のアイデンティティーを歴史、神話、物語、民族性も含めて建築に演出しているのである。

例えば、カサ・ミラの最大の特徴は、何と行っても屋上階の階段室や煙突である。どれもが彫塑的で有機的である。
しかも平面は幾何学であるが、立体になると既に彫刻的となる。これもアートである。その階段室を作るにあたって、ガウディの工事現場で特にカサ・バトリョやカサ・ミラを手がけていたホセ・バイヨ・フォンは故ホワン・バセゴダ建築家・博士と会話をしている。その記録が録音テープで残っていて、大学から小冊子として出版されている。
そのなかでカサ・ミラの施工現場での様子を伺える場面である。
カサ・ミラの屋上階出口について
バセゴダ博士: 煙突に関してジュジュールさんは関与しましたか?
ホセ・バイヨ: いいえ、それはアントニさん(アントニオ・ガウディの職人達による呼名)が模型職人ベルトランと直接作りました。彼は模型の裏や前をみて「そうそう」と言い,ベルトランがよく混ぜた石膏の器をもってきて、さっそくその局面に広げたり、削り落としたりして修正しました。1〜2ヶ月間、協力者の1人が残って作り、修正し私達に寸法をくれました。

バセゴダ博士: 階段室はどのように作りましたか?
ホセ・バイヨ:  あ〜、屋上階の出口ですね。それは全て平手張り(Mao de Pla)その上に放射状にあばら骨をつけて全周の形の小隔壁仕上げ、外部階段室がもっと高い部分となる。
バセゴダ博士: シンプルな二重層でつくりましたか?
ホセ・バイヨ: シンプルな二重層そして破砕タイルで目地割りをするようにしていました。そして固定されて器のようになり、レンガの角がでても影響はなかった。というのも、あばら骨を細くしたり厚くしたりて調整しました。
例えばもっとも膨らんでいるところは、5cmあるが、一方では40cmつまり不完全な部分の修正をするかはタイルが十分でありませんでしたので左官のミスとして適当に処理しました。

とある。
現場合わせをするにあたってガウディも職人さん任せのところもあったと言う一面である。
つまりガウディは全体の姿をイメージングしてそれに合わせて職人さん達が納まりを決めているわけである。施工の細かな納まりまでは建築家より職人の方が適切な処置をしてくれていたと言うことである。

     
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