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建築家トップ > バルセロナ便り > 第254回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

サグラダ・ファミリア教会の完成を急ぐ必用は?

科学が成長するというのは、人々の営みが何千年もかけて繰り返されることで、地球が存在する限り、永久的にこの活動が続く。
ガウディのいう「理想」と言う言葉が最近特に気にはなっているが、これもどこか人々の成長に関わるような意味を示している。
従来のゴシック建築で、例えばバルセロナ大聖堂の建設は11世紀から始まり19世紀末までつづいていたので、800年以上はかかっている。
しかもその間に多くの技術が誕生し駆使され、時代を超越した姿を見せている。
問題は、時間を超越する理想の姿や成長は何か。とすると今まで考える事ができない将来に対する希望と提案がされることであり、さらに進歩と提案のメッセージが含まれるという事になるはずだ。
その意味を考慮した上で、理想のゴシック建築というのは時間もさることながらより多くの知恵や技術が反映された作品となることを望んでいると見ている。

そうすればサグラダ・ファミリア教会の建設では、ガウディ自ら考案した構造体からさらにグレードアップした構造とその合理化を考える事は、現在の課題だと思っている。したがってガウディのフニクラー理論による構造体の裏付けをとるための、その逆さ吊り構造実験によって見事に解決と手法を合理化したのであるが、さらに今後何がより優れた形と素材になるのかという事が話題になっても良いはずである。
作品を作る時には時間の経過は決して無駄ではい。むしろより多くの知恵と技術が関わり合ってこそ、これまでにあり得なかった作品の創作ということになる。
教会は、そもそも人々の集まる場所であり、しかもそこが聖なる家ということであれば人々の尽くせる限りの集大成ということにもなるはずである。
今までに133年の歳月が流れてきている。さら従来のゴシック建築の建設にかかった年月を越えるような建築を望むなら、実際にはこれからさらに数十倍の歳月がかかっても何の不思議でもないはずである。
むしろガウディの理想というのは、その理念に基づく献身的な場であればあるほどより永劫な教会建築として昇華するとみていたはずである。

その意味では個人的、主観的な欲望と虚栄に踊らされることなく、できる限りの創作作業を続ける事がむしろ最大の意味になるかと思える。

ガウディ建築として多くの人々が注目していると思うが、すでにガウディは、二人目の主任建築家である。仕事を始めてから43年が周期だとすれば、その20倍かかっても何らおかしくはない。ゴシック建築の建築家達は望むところの様にも思える。その意味では2026年でガウディが亡くなって100年を迎えるという曖昧なしかもガウディの死を弔うという節目に合わせての現在の工事期間というのは全くナンセンスとしか思えない。つまり一人の建築家だけでなく何十人、何百人というそれぞれの時代の建築家達が知恵を絞り出し、新たな手法や技術を投入し、本当にガウディの精神性を尊重した建築作品を目指す方がより適切な姿として見ている。それではじめて理想の建築、サグラダ・ファミリア教会になり得ると信じている。この教会建設でガウディの存在は明白であり崇高な建築表現を産み出したが、さらに今後の建築家達はそれを乗り越えるような提案や創作をする事をガウディは願っていたような気もする。それが石に刻まれ半永久的に19世紀から建設史上に存在しなかった建築に変貌するはずである。
     
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