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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

学生の実測に同行して新たな気づき

2017年12月16日、大阪の某工業高校の学生たち10人が、3人の先生による引率でバルセロナにやってきた。彼らもガウディの作品を実測するのだといっていた。それで今回はミラージェスの門の実測とさらに時間があればグエル別邸もしたいということであった。
現場に同行して学生たちの実測風景を拝見させてもらった。
確かに共同作業では一人でする作業とは違って作業時間が短縮される。さらにメモと実測の仕方がアナログのように見えるがそうではない。
実は利用していた道具は、超モダンな道具、携帯とレーザー測量器、iPadまでが利用されていた。iPadで写真を撮ってそこに寸法を入れ込む作業をしているのである。しかし、折角の実測で経験できることとして、それから読み取れることが半減することになる。時間はかかってもその詳細を測ろうとすることで、場合によっては測る工夫もすることで、そこから読み取れることは頭の体操にもなる。そこが短縮されてしまうと、折角の実測の時間がもったいない気がした。
それでもメモをする学生さんに、他の仲間たちが実測している間、「測ろうとしている詳細の全体の雰囲気を少しでもスケッチしては」と薦めた。
始めは躊躇していたが、素直に私の提案を受け入れて徐々に描き始めた。
予想もしていなかったスケッチの作業に彼自身も少々驚きが生まれたとようだった。と言うより感動していたのかもしれない。
それまでの詳細スケッチに寸法を入れるという作業と、全体の空間の中でのスケッチと実測データーの書き込みでは理解が違うのである。そこに気がついたのだと思う。
そこで初めて何のための実測かが考えられるようになったはずである。

この門の脇には車用の門と人間用の門の二つがある。その間の壁が妙に膨らみ、その中が凹んでいる。
私は今迄なんどもこの門を通っているが、これまでにその膨らみを疑問視したことはなかった。と言うよりも単なる飾りやデザインとしての気まぐれな詳細として受け止めていた。しかし今回、学生達と同行してしばらくそれを観察しているうちに、これは単なる装飾的な膨らみではないことに気がつき始めた。
門の裏側ではその膨らみを意識したように、補強的な控え壁が部分的に施されている。つまりこの膨らみは単なる装飾的な膨らみではないという裏付けになる。ではその意味は何か。
ガウディの装飾概念を紐解くことでその意味が読み取れる気がしている。

これが飾りとしてではなくどんな意味合いをもたせた詳細なのか探るのはとても面白い。ここに時代性と機能性、そしてオーナーのアイデンティティーがあることも考慮することになるだろう。
そうすることでこの無駄とも思える装飾的な詳細に重要な意味が含まれていることが想像出来る。そのためにガウディはオーナーを説得させて予算をつけさせていることが想像できるのである。

オーナーが予算を膨らませる理由となる要素とは何か。
それを探るには歴史的な背景とこのプロジェクトの依頼に至る経緯を調べる必要がある。バセゴダ教授の「巨匠ガウディ」によると「印刷、製本、出版業のエルメネヒルド・ミラージェス・アングレス(Helmenegildo  Miralles Anglés)は、カートンの独自の製造特許をもった圧縮板の製造業をしていた」としている。つまりこの事業家のための何かがここで演出される予定だったという洞察が生まれる。

     
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