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建築家トップ > バルセロナ便り > 第307回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

テンサグリティーとフニクラー

ガウディによる自然観察の中で最も注目される「自然を本」とする彼の視点に焦点を絞ってみる。
ベルゴスとの会話で
「偉大な本はいつも開かれている。 それは自然でありそれらが理解できるように努力するとよい」と話している。 
さらに
「建設は太陽や雨から逃れる目的がある。
模倣は要素にまで至り柱の元祖は木であった。次に葉が柱頭を成す。
これがサグラダ・ファミリアの新しい構造の正当化である」

と続いている。このあたりのガウディによる考察というのは芸術家・建築家として熟成された視点からの自然観察であり、建築への応用を説明するものである。
ここでさらに自然観察を深めると何が見えてくるのだろうか。
植物という特性と構造の観察もありえる。
つまり植物の構成は細胞(セル、Celula)からなっている。因みに生物学者で細胞建築学の権威である木村暁氏によると人の細胞は30兆個とされているとしている。

彼の細胞建築学の研究で特に興味を持ったのは、テンサグリティーという構造システムである。これは確かバックミンスター・フラーが球体(Geodecicaのドームスタジアム)をオクテットトラス構造というのを利用して1954年に計画した。これは正四面体の接合による構造体である。これをフラーが特許取得し、特許メーカーのような発明家でもある。
その彼は、テンサグリティーとは最小限の部材でしかもテンションだけで構造体となる形、を提唱していた。それが細胞の構造にもなっているというのが木村氏の説明に関わってくる。
テンションだけで最小限の部材で構造体を作るというのは、ガウディのフニクラー曲線に類似する。しかもこれにオクテットトラスを合成するとさらに最小部材による構造となりうるという展開が考えられる。つまりこの概念は新たな構造の世界に導いてくれる可能性もあるということである。
さらに最小限の構造体となり得るのかは今後の構造実験による。この四面体によるフニクラー曲線は捻れる特性もあるので、場合によってはフィボナッチー級数による螺旋状のフニクラーになるのだろうかという創造もできるのだが、理論的な証明が必要になる。
とても面白い構造解析となるし形も球体ではなくさらに螺旋の入るフニクラー状のドームが、より理想的な形としていつの日か出現するのかもしれない。
構造解析と数学、物理そして建築に関心のある人による新たな建築構造の研究テーマになるだろう。場合によっては、未来の建築構造の一つとして提唱されるだろう。
ガウディが託した未来への展望というのはこのような自然観察から思考される新たな概念の開発を示唆しているということも言えるだろう。
もしここにガウディがいればとても興味を持つテーマであり、今後の街の空間に登場するようになるだろう。
まだ自然には数知れない未知の生物や遺跡、自然現象がある。その意味では建築も含め総合科学による視点と交流がさらに活発になることをすすめる。現在私はバルセロナからそのような総合的な研究機関を作る準備を始めている。これが場合によってはまちづくりのベースにもなると信じている。

     
田中裕也氏プロフィール
 
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