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建築家トップ > バルセロナ便り > 第344回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


グエル公園はイタリア式?イギリス式?

グエル公園の造園ではイギリス式の田園都市計画というように言われてきた。しかも中央入口に英語でParkと記されている。
グエルの玄孫カルメン・グエルは、2002年に「グエルとガウディ」という本を執筆してガウディ研究室にその紹介をしに来た。バセゴダ教授から私にカルメンさんを紹介されて以来のことであった。そのカルメンさんからグエル公園の話を聞いた。彼の幼い頃の想い出がグエル公園に再現されているという。彼女は、グエルは幼少期から夏休みになると母の実家で親と過ごしていたというのだ。ジェノバは母の故郷である。
とすればイギリスの造園よりはイタリア式であるということになる。そこでイタリア式の造園というのはどうかというと、植栽なども幾何学的に処理したりする。しかも所々に彫塑も収めたりもする。一方でイギリス様式の造園はできるだけ自然形態を利用する傾向にあることから、日本的な造園に類似しているようにも見える。
グエル公園では彫塑的なものはあるが、植栽までも幾何学的な処理はされてはいないことに気がつく。一方で建築物は見事な幾何学で構成されていることは一目瞭然となっている。
造園計画における幾何学を構築物による展開に限っているのは、このグエル公園の特徴とも言える。ところが植栽に関しては自然の変化に任せている。高架の中のイナゴ豆の有り様がその代表的な裏付けになっている。高架の間にある空き地は分譲住宅地としての敷地となっていることから、当時は幾何学的な植栽処理がされてはいない。1902年以降は公園としての計画に変更されたことで空き地にも植栽を開始するが、それでも幾何学的な処理を見せてはいない。
一方で建物の幾何学構成に注目すると、通常の建物としての演出ではないということに気づくはずである。平面や立面計画も円により構成されていることが作図をすることで理解できた。つまりこのようなパビリオンが円の構成で計画されているということに気がついたのだ。ではどうしてガウディはそのように円を利用した建築計画をしたのだろうか。どんな目的で円による構成をしたのだろうか。
しかもそこは中央入口のパビリオンである。さらに壁面は、塀の面の延長で連続した建築になっている。曲面はしなやかにしかも円と曲面をもたせて中央入口を構成していることにも気がつくはずだ。また屋根の関わりはプレファブ工法による破砕タイル仕上げの鋸朶によって組み上げられている。その上に続いて同じように破砕タイルの仕上げによるキューポラが見られる。これら連続した同じような仕上げになっているのは、どのような意味を示しているのか。
これもその謎解きのキーワードになっている。
この仕上げによって地域性の演出になっていることに気がつくはずだ。 しかもそれはこの地域で生まれたものでもある。それが理解できるとこのグエル公園の中央入口の演出が理解できるようになり、続いて中央の二股に分かれた階段も理解ができるようになる。最初はテーマパークにも見えた階段ではあった。

それらのコードが理解できるようになってからはガウディ建築の見え方つまり理解の仕方が大きく変わることになった。
     
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