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建築家トップ > バルセロナ便り > 第348回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


技術や人間が進歩し、理想の地球環境へ

建築計画は、利用者または居住者の用途や特性に応じて建物の設計方針が決められる。そしてガウディ建築の場合それが明確に演出される。私がガウディ建築の実測・作図を始めた頃は、無我夢中になって建物や詳細を測ることだけの作業を進めてきた。そして1992年の博士論文をカタルニア工科大学バルセロナ高等建築学校で発表して以降は、研究作業がさらに別の方向に展開し始めた。ようやく2010年以降になって具体的なガウディ・コードを確認する作業に着手するようになった。それまでは実測・作図の整理に流された活動を進めていたが、その後重要な原書12冊を翻訳、転写もする事でさらに物を観察する視点が大きく変わってきているように実感している。そしてこれが本格的なガウディ・コードの世界になると確信して現在に至る。
私の研究は身勝手な研究というよりどうすれば研究になるのかという暗中模索からのスタートであった。はじめにグエル公園の階段を測る事で何かが見えるかもしれないという希望的観測からの世界であり、全くその先の予定など無に等しかった。それにもかかわらず、その作業は自分にできる唯一最高のことなのだと決断した。
すると不思議にその後の出来事なども気にせず、なんとでも解決方法は見つかるものだと思って人生のコマを進めてきた。人からは行き当たりバッタリの人生と批判される。その頃、私の決断は「切腹行為」だとも批判された。全く後先を考えない行動であった。まるで自殺行為にも似ている。 ところが人生というのは不思議なものである。むしろその「切腹するような決断」をしたことで自分の気持ちは逆に落ち着いてしまった。しかもおかしな雑念も消えて、それに専念することができた。そうすることで何をするにもその作業が中心で物事が動くようになって今日に至っている。
そして予想もできなかったことが次々と始まる。全く別世界の活動になっているのだ。のちにその現象を「もう一人の自分」がいるということに気がつく。

日本で生活していた25歳までの人生を「カオスの人生」と見ている。振り返ってみると確かにその時代は人の言うこともそうだが学校での先生たちの話も耳に入らずいつも身勝手な行動であったことに気がつく。それでも何とか学業を済ませ、現在もまだ生きていること自体が不思議でならない。
そして肉体労働とも言える実測・作図・そしてスペイン語を1から始めて現在に至るまでの経過を振り返ってみる。するとその軌跡はまさに神がかりな奇跡になっていることに気がつく。しかし神も奇跡も宇宙人によるものでもない。地球上にいる限りは、やはり言葉と知恵を養ってきた人間による成果なのだと確信している。人々は自分達の生活する環境をも作り出せるようになってきているではないか。しかも現在では雲に届くほどの高さの建造物までも作れるようになってきた。それはまさに技術力の発展の成果である。科学・技術・思考の真価が現在を生み出しているという、新たな奇跡を私達は現実のものとして見ているのだ。その進化のスピードは昭和時代レベルではない。それははるかに超越している気もする。当時は21世紀の進化を予想して鉄腕アトムまで描かれていた。現在ではロボットが走っている姿を現実に見ている。それはFAKEではない。その進歩に一躍かっているのは人間が作り上げたAIの世界となっている。
地球環境を保護しながら、持続可能な開発目標(SDGs)を国際的なテーマとして世界が動き始めている。以前であれば少数の人たちだけで騒いでいたことが、この数年で世界がそのような理想の環境にするための運動を始めた。
そんな動きをすでにガウディは見通していたのだろうか。彼の建築計画の中では現在のような活動や思考を持って作品作りを進めていたということにも気がつく。

中でも自然を尊重し、エコロジックなリサイクルまでも初期の作品から取り入れていたことに注目してほしい。
     
田中裕也氏プロフィール
 
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