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建築家トップ > バルセロナ便り > 第347回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


実測と作図の集大成がガウディ・コード

実測していた頃、特にグエル公園の入口はそこで利用されている幾何学は意識していなかったが、原書を翻訳しながら今日まで続けてきたことで明らかになってきたことがある。まずは地中海文化である。スペインの中でもバルセロナは地中海に面してギリシャ時代の影響を受け、さらにローマ時代の植民地活動にも影響される。その後、イスラム文化の影響を受けながらゴシック時代を迎えて今日のバルセロナの文化が築かれている。これらの異文化の交流がこの地に何を残してきたのだろうか。文化だけではなくカタルニア民族そのもののあり方にまで影響を及ぼしていると見ることができる。
文化や思想の交流がどんな影響を及ぼしているのか。地球全体の民族がそのようになっているという表現は大袈裟だろうか。プレートテクトニクス理論による大陸形成のあり方と後の生物の発生から始まり、民族移動のあり方も同じように現在に至る計り知れない時間の流れによって生まれてきていることは知られている。
中でもガウディはこの地中海文化に傾倒しており、その演出を作品の中に反映させているというのは協力者達との会話で示唆している。従って彼の芸術的意識は、ヘレニズム、ローマをベースにした展開が自然の流れとして捉えることができる。
中でも幾何学の応用は、イスラム文化も含めてのことではあるが、西欧文化の芸術性の起点がギリシャからという視点は覆すことはできないだろう。特にギリシャ神話が普及し哲学もユーラシア大陸全域に影響を及ぼしていることから、地中海文化への影響度を伺うことができる。
従って気候風土による民族性は風俗習慣がそれによって定着するということにもなり、彼の芸術性はそれも含めて演出されていることになる。
これについてはガウディも理解し、彼の建築や芸術にもその反映が見られる。
ガウディはダビンチの芸術性や創作性を尊敬していたことは協力者達との会話の中でも示されている。ガウディとダビンチは400年の違いがある。しかもガウディは建築の発明家であり、ダビンチは芸術・文化の発明家という評価が適していると思えてきた。次世代への文化の継承をどのようにするかは個々の手段によって異なるものである。その中で発明をするという行為は、常識や固定概念を超越するくらいの努力と献身を必要とするのだろう。
ガウディは、「地中海の人々は化物を作り出すのが得意」というような言葉を協力者に残している。それはむしろ彼自身の創作性を示唆している言葉でもある。その一面を、実測と作図で時間をかけて観察することで見えてくるというのも事実である。中でもガウディ・コードは私がその作業の中で見つけてきた重要なテーマとなったが、最初からこのテーマを見つけようとしてきたのではない。むしろガウディ建築の実測・作図をすることで、その創作性を知りたいという単純な好奇心からの作業であったにすぎない。それが偶然の発見としてガウディ・コードを見つけてきている。
実測・作図からその当時の原書を検証することで見えてくるものがある。つまりエビデンスから見えてくるのは、新たな歴史的検証方法もあるということに気がつく。
 私のガウディ研究では、どうすれば研究になるのだろうかと当初は悩まされていたが、実測から作図によってその奥にある感性の非常にシンプルな状況が再現され、次第に自らの体験として知ることができるようになった。

これまでは実測と作図から見えていたその成果としての歴史的経緯による説明をしてきたが、これからはその結果として見えてきたガウディ・コードの話を進めてみようと思っているのだが。
     
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