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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

カサ・ミラはガウディのオリジナル作品か?

ガウディは建築における音響について“円筒と言われる建築スタイルは堅く不活性な塊であって、安定性とは関係なく光には障害となるものである。
その堅さと結合にはフープ(帯)、縦溝、モールディングによって種類が与えられる。
曲面を使う理由は、モールディングを必要とせず、それ自体が場所に応じて適応し、空間に塊や不活性なものを避け、光りも多く取り入れこれによって音響も良くなる“
と語っている。

ガウディにとって、音は重要な建築ファクターであったことは説明するまでもない。
形によって音が変わることの体験は彼の幼少時代に遡ることもできる。
建築家が音に関心がなければ、非常に住みにくい空間になってしまうのも間違いない。
煙突の形によっては、笛の様な効果を醸し出すだろう。
穴の形状によっては風の入り具合で管楽器のような効果にもなり得る。そんな音を想像しながら階段からパティオの実測。外壁部分の窓の大きさと形状や、柱の形状とその位置関係が気になっていた。ところが外壁部分では、柱とも壁とも判断がしにくいような形状で、開口部の形を比較しながら階段も測ることにした。

ガウディの利用する階段は、グエル公園とカサ・バトリョのものから次第にそのガウディサイズが見えてきた。そんな経験をもとにしてカサ・ミラの隣地境界壁面にある階段を測っていた。随分と曲がりくねった階段である。
どうしてこんなに曲がらなければならないのか疑問に思っていた。
そんな階段が、さらにパティオに面して2カ所あるのでそれも測る。
蹴上はどの階段も共通していることが解ってきた。
この作業から各階の高さも想定できた。


10月に行われた「ガウディ研究ワークショップと
ピレネー山脈ロマネスク建築ツアー」での写真

その階段室から各部屋の位置を確認する。取りあえず始めは実測しえる部分だけのデータを下にして透視図を描く準備をした。
屋根裏階のアパート部分の実測もセサール・マルティネールによる実測図と私の実測を合成しながら修正を加えた。最初に屋上階の放物曲線だけのアイソメは描けると思いその製作を始めた。
その作図でアーチの弦の高さがそれぞれ違う事に気が付いた。それらがどのような相関関係にあり、幾何学的にどんな関係なのかを自分に問いかけた。

解答を得るために、放物曲線アーチを施工するための原寸図をどのように現場で描くのかということからはじめた。
それぞれ曲率や弦の高さが違うアーチをどのように施工するのだろうか、というようなことも考えながらの実測であった。

幾何学の知識は、建築施工処理を容易にしてくれる。
その基本姿勢を崩さずにガウディの建築手法をも考えることができると思っていた。
セサール・マルティネールによる平面の外壁輪郭と私の実測値を参考にしながら作図を始めた。作図制作の方針としてはガウディ建築当時の姿を再生してみようという作業にした。

カサ・ミラもガウディの作品であるにも関わらず、オリジナル性の真意が問われるのである。というのも “悲劇の週間”を境にガウディはこの作品の現場から手を引いてしまうので、ガウディとカサ・ミラの関わりは1909年までということになる。
ところがその時点で、作品はまだ完成していなかったのである。

   
田中裕也氏プロフィール
 
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