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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第73回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

現代の江別で、ガウディと同じ喜びを体験

先日、ホセ・バヨ・フォンに直撃インタビューをした王立ガウディ研究室の管理人バセゴダ博士と面会した。そして、バヨ自身にとっては「記念すべき言葉」とかむしろ「勲章のような言葉」とバヨが説明していた時の状況を尋ねた。
バセゴダ博士は「確かに、ガウディ自ら言われた時の事を想いだし、感激のあまりインタビューの場でも同じように涙を流しながら話していた」と言う。
人の心を動揺させる程の言葉にはいろいろあるだろうが、プラスの高揚をさせるような言葉は誰にとってもうれしいものである。しかも尊敬する人からの言葉であればより周波数を揺さぶる。

それに答えるだけの器量がガウディにあったという事の裏付けが、今でも歴史を遡って証明してくれているのである。
ガウディも素晴らしいが、純真にガウディの指示に従いながらもさらに創作の世界を謳歌していたホセ・バヨも素晴らしい人である。
決しておごりのない行動と、作品に対するひたむきさがカサ・ミラを作り上げたのだろう。
ガウディの成熟期の作品をより優れたものに成し得た裏には、このような人達の技術と協力が存在したということの証なのでる。

このインタビューの記録を翻訳しながら、工事現場の様子が私の眼球の裏にも現れる。
その光景は鮮明であり、作家であるガウディと毎日作る事の楽しさとその悦びを分かち合える機会がいつも職人達の傍にあったはずだが、今ではそのような光景は少なくなっている。
しかも彼等は予算以上の作業をしているのも確かである。
作業時間も朝早くから夜遅くまでで、しかも研究を続けていたこともこのインタビューから読み取れるのである。

私のように孤独の作業からでは共同作業による創作の悦びを感じるというのは難しい。
作家が現場にいて計画の詳細に至るまで職人達への説明をし、施工上の問題をその場で解決させる、というところに意義がある。
それを悦びと感じ得る職人さんも今では少なくなってきているのだろうか?

私が2004年に、江別で直径4m高さ4mの煉瓦ボールトを作った時に、短い期間ではあったが素晴らしい経験をさせてもらった。
ガウディ建築のシミュレーションとも言える放物回転体、又はカテナリー回転体とも言える構造で世界には二つと無いボールトなので、4辺鞍型ボールト(愛称、スズランボベダ)と命名して建設した。
日本では馴染みのない名前だろうし形である。

正味10日間という施工期間と厚さ65mmという構造体は、鉄筋コンクリート造では考えられない。それが単なる煉瓦構造という施工技術に足場施工を始めてから3日目で取り外しという状況、これには地元の職人さんも腰を抜かす程の驚異にも見えた。

この施工の為にスペインのカタルニア地方から二人の伝統職人を同行させ、さらに大阪からも造園職人、名古屋から大学教授、北海道の煉瓦職人達も工事参加協力をしてくれた。
協力者達のボランティー精神がこの工事を支えていたと言うのが事実である。
施行中は、不思議に怒鳴り声も聞こえず、騒動になるような場面もなく、むしろ職人達の役目を自覚して、スームズに鼻歌まじりに作業をこなしていたのが現状であった。

   
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