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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

洗面所でヒゲを剃っていて得た“ヒント”

ガウディは知恵について「知恵は完璧な結果を求める科学を超越している。 それは人生であり総合である。 科学の反対は死である。知恵は豊かな財産である。 科学は分析の成果によるものであり、偽札を握らせないようにするためである。」と述べている。

このコロニア・グエルの敷地にある松の木林の樹木が自然によるものか、それとも作為的に植栽されたものかはまだ解らないが、そこで以前に実測していた数値と理論値の比較もしてみる。
その為にポーチの実測をして図面に落とし、その整理を終えてから地下聖堂の内部の柱と梁の実測となる。
煉瓦による小梁の形に驚かされる。煉瓦の数を数えながら寸法と形状を理解する。
それにしても柱の位置とそれぞれの形を把握するのに時間がかかった。
しかも柱の径も形状も場所によって異なる。
それに合わせて窓の位置や壁の姿も異なる。それらひとつひとつの違いを測っているうちにいつのまにか全部測る事ができた。
幸いにしてイシドラ・プ?チ氏が残してくれていた平面図があるので、その作図を下に寸法の確認をすることができたが、それでも軸が若干ずれている事に気がつく。そのずれがコピーのせいなのかどうかは解らないが、その確認を進めた。
この実測は、基本的にガウディが残したオリジナルの建物の状態での図面として再現する作業である。ガウディが残した図面はデッサンのみであって、ほかに作図らしいものは見つからない。一説には内戦で焼失したとしているが、その真相は不明である。

この地下聖堂では柱も梁も壁も全て形が違う。しかも位置も不規則のように見える。

そんな中でも、ガウディは基本的な幾何学をどこかで筋となって通しているはずと思いその確認をする事にした。
この場合、中央身廊の軸線と多重フニクラーの円の構成とがどのような関係にあり、ポーチの関わりがどのようになっているかという推測である。
その円状の多重フニクラーの位置は身廊の軸線状にあることまでは想定できるが、柱の位置関係がまだ確定できないのである。
その柱の中でも玄武岩による柱の形は不定形であり、どの当たりを中心にというより重心としてかんがえるかということで変わってくる。
その柱のジョイントとして柱頭と支柱、支柱と柱礎には鉛が利用されている事がわかった。

このような検証をしながらこの作品の実測を進めている最中、1984年の12月にバルセロナで巨匠ガウディ展が開催される、という情報が入ってきた。主催は地元の金融機関ラ・カイシャで、場所は19世紀末建築カサ・マカヤ(1898?1900)のパティオが会場に選ばれた。この建物はプーチ・カダファルクの計画した豪華な建物である。
依頼はラ・カイシャの財団で当時のディレクターはオリオール・フォルト氏であった。
監修はガウディ研究室の代表ジョワン・バセゴダ氏、私は模型を作る為の作図を依頼されたが、他にコロニア・グエル地下聖堂の鎖による逆さ吊り構造実験模型の製作提案をして承認された。

問題はその展示方法であり、見せ方に工夫が必要であった。
というのもガウディは、当時その逆さ吊り構造実験模型を写真に撮り、それをひっくり返してその上からポスターカラーでデッサンをしたとされている。
私はそれと同じ過程を演出しては何の知恵もないと思い、それから一歩進めた方法として像を反転させる展示手法はないかとしばらく考えた。
ある日、洗面所で髭を剃っていて自分のシャツのマークが逆になっていることに気がつき、早速その効果を利用して模型を逆さに見せる仕掛けを計画した。

   
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