家族構成の変化に伴い自宅の増改修を行った。新築の際に、敷地や周辺環境を受け入れ、読み解いていくのと同じように、前向きに既存の状態と向き合う、既存部分をいわば「第二の自然」として捉え、既存部分の状態を良くも悪くも素直に受け入れ積極的に再利用していくことにした。増改修によって、2階の個室は、「設計事務所」、「団欒の場」、「家族構成が変化に伴う寝室」という多目的な要求に応える必要があった。中心にしつらえたニュートラルな空間は増築部分を生かして天井を高くし、くつろぎと事務所というクールな雰囲気の両方に適する仕上とした。その廻りには間仕切りなしに目的に特化したコーナーを配し、各用途に適した日本の木材や仕上を用い、異なる天井高さを与えることによって空間を差別化している。ニュートラルな空間を中心に各コーナーがその時々に応じ緩やかな関係を結ぶことで、その場の質を生み出し、私達の多様な生活を可能にしている。
(左から時計回りに)
1.アトリエ全景:天井と壁仕上は、調湿機能のある白いワラ入り漆喰を採用し、床仕上は、30ミリのムクの秋田杉を採用。杉はやや柔らかく傷がつきやすいが、夏はサラサラし、冬は暖かい。本棚は、トップライトと高い天井を生かすデザインとした。
2.作業コーナー:作業台上部の照明は、作業時には明るい直接照明となり、ソファーでくつろぐ際には、落着きのある間接照明の役目を果たす。壁仕上は、掲示板としても使えるように有孔シナベニアを採用。
3.東側外観:外壁は2階をガルバリウム鋼板とし、1階はコスト配分に配慮してフレキシブルボートを採用。南面の窓やトップライトは、室内の雰囲気が外部にも伝わるように、位置や形状を工夫した。
4.和室コーナー:リフォーム以前は使いみちのなかった一間幅というスペースの狭さに着目し、極小の和室にリフォームした。将来は夫婦の寝室となる。天井と壁仕上には落ち着きのある柿渋灰かぶせ和紙を採用。
5.ソファーコーナー:天井と壁の仕上に青森ヒバを採用した。ヒバの香りを楽しみながらくつろぐことができる。天井を低く抑えることで、落着きのある空間となった。
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