その年6月に突然、スペイン大使館からの通知を受け取った。
どんな内容の返事による通知かは勿論予想はできなかった。しかし50%のチャンスと思いながら一気に封を開けてみると、国費留学生の合格通知であった。これで新たな冒険への架け橋が架けられたのである。
その合格通知で驚くというよりも改めて真剣勝負といった気にさせられた。
さっそく旅支度を始めた。実家に戻って両親に国費留学の報告をして悦んでもらえると思った。ところが予想外の返事で、父は何故か心配のあまり怒っていた。兄はきつい口調で私との決別の言葉を吐いていた。しかし母と長男の兄だけは私の夢を実現させるための応援をしてくれていたが、どうも不安げな素振りが隠しきれなかったような印象を想い出す。
その家族の反対を押し切って病み上がりの私は、「大工の現場で鍛えた体はこれからしばらく使える」と自信をもって8月にスペイン入りすることになるが、その前に久しぶりのヨーロッパ旅行をすることにした。 |