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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第9回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

自ら名付けた“幻の鐘”  その姿、音色を想像するだけでも楽しい

“今日も鐘が鳴る鳴るサグラダ・ファミリア”と頭の中で鐘を鳴らしながら毎日のようにガウディの考えた鐘を想像する。現在はシンセサイザーで鐘を鳴らしているので興ざめがするが、それでもロマンを追いかける者としてガウディの考えていた鐘のあり方を追求するのもまた面白い研究である。
ガウディは鐘について“鐘の振動は、素材による。ブロンズによる合金は激しい振動性のものであり、全ての素材を長い間使用していると振動に適応する。鐘は古いほど良い音がする。あまりの古さに亀裂が入りそうになるが、その時が一番良い音がする。”と言い残している。
 

サグラダ・ファミリア教会「受難の門」の建設に従事した建築家-プーチ・ボアダが1929年に執筆した“サグラダ・ファミリア教会”、さらにガウディ研究家で建築家-セサール・マルティネールによる1967年に執筆された“ガウディ、生涯、理論、作品”の中でサグラダ・ファミリア教会の“幻の鐘”について記されているが、実際には音響問題について触れているのであって“幻の鐘”とはどこにも言ってない。これはミステリーが沢山残っている未完の鐘ということで私が勝手に付けた呼び名である。

鐘の形は“双曲面体”と記されている。
見方によってはオーボエ系のカタルニア民族楽器“グラジャ”にも似ている。
要するにラッパ状の形であるが、通常のラッパのように端が開き中間では逆に細すぎて、打楽器用の鐘にはならない。
そこでガウディの“幻の鐘のプロポーション”を検討するにあたっては、当時の模型室の写真からその鐘の姿が微かにみえるので、それからの形とプロポーションを想定することにした。

早朝は騒音も少なく空気も澄んでいる。この状態の中で聞くコンセプション教会の鐘が、もっともガウディが望んでいた音色であった。
しかもその鐘の音量は、サグラダ・ファミリア教会からグエル公園のガウディの家のところまで聞こえる程であった。
さらにマルティネールはガウディにとって、鐘の音によるメランコリーは、夕暮れ時で その日の終わりとブロンズの音のハーモニーが夕暮れ時にもっとも印象的となる“といっている。

 
残された資料から再現するとつじつまが合わない!?
 
王立ガウディ研究所所蔵
王立ガウディ研究所所蔵
ガウディによる鐘の実験は、サグラダ・ファミリア教会に実験用として取り付けた筒状の鐘とバルセロナの他の教会の鐘とを、朝5時にグエル公園の自宅から聞き比べをすることから始まった。
この筒状の鐘の前例として実験データがなかったことから、彼の実験全てがその後の参考資料になった。
ガウディが考案したその筒状の鐘は、従来の兜型の鐘と比較すると同じような音量を半分くらいの大きさで出せることを実験から確認する。
この筒状の鐘の本数は、約84本でファを最低音としているがその長さが20mとなる。その音は素人では聞き取りにくい。
セサール・マルティネールの記述によると技術的な漸近線の数値まで記しているが、それからすると鐘の直径が最大で約1.22mになってしまう。
因みに誕生の門の鐘楼内部の直径は、約3.2mだから鐘の長さも直径もそんなに大きければ既に鐘楼の中には納まらない。床の穴は1.5mなのでそこからなら何とか挿入できても、一階の階高が約6mなので45°の角度で床の開口部に挿入しようとしても長さ8mが限界。しかも床の開口部も1.76mでなければ挿入できないことから現在の開口の大きさからでは無理ということになる。
次に重量の問題も当然考慮しなくてはならない。
 
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