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鐘楼に納まりきれない大きさ、重量の“幻の鐘”
ガウディは“人間の知識、徳、力を常に向上させるには段階(ステップ)が不可欠である。”という。
簡単なようで難しいのはこの事である。貪欲に何にでも興味ある物ならと思っていきなり取りかかるとパニックに陥る。
未踏の研究作業は、特に予想などつくわけもなくアドバイスも実務的な協力もありえない。
その作業の“ステップ”など考えるのは一筋縄ではいかないのも当然である。
私の場合は、それを承知でまずは実測による体当たりでどんな反応を示すかを確かめる。
これには膨大な時間的がかかり人は無意味だとか言うが、意外な方向を示してくれる。
“人は見かけによらず”というが、正に“問題の壁”も見かけとは違う。
触れてみないことには何にも判断ができないというのも経験上の事実である。 |
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計算では“幻の鐘”の総重量は、一つの鐘楼で300t以上? |
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サクラダファミリア外観 |
鐘の製造は、紀元前4500年と言われているが、儀式に利用されるようになったのは紀元前1750年頃の中国の青銅時代が始まり。紀元前200年には蝋型が利用される。
その後ギリシャ時代に、ブロンズの大杯や壷の為に、蝋型によって作られたオブジェを型から抜き取る時に、金鎚で叩き割って心地良い音がしたことから鐘が作られるようになり、ポンペイの近くのカンパーニアにおいてノラのパウリーノ司教が初めて鐘を利用したとされている。
参考の為に世界でもっとも大きな鐘は、モスクワにある鐘で重さが250トン、高さが7mで直径6.8mとされている。これは展示されているだけで実際には鐘として使用されていない。
ガウディが予定していた鐘では、一つの鐘楼に対して少なくとも7本の筒状の鐘を設置されることになるという。 鐘の最大重量だけでも単純計算で一個当たり約44トンと馬鹿げた荷重となってしまうことから、7個の鐘が設置されると少なくとも308トンの鐘の荷重となる。積載荷重がこれほど大きくなれば構造的問題となる。
しかしそれだけでは済まない。
鐘を叩くハンマーの重量が4%とすると16トン、更に支持材荷重、振動力、装置等の荷重も考慮しなければならない。
鐘の音は、叩くハンマーの重さにそれなりの重さがなければならない。十分でないと折角のグッドアイデアの鐘の役目を果たさず音も鳴らない。
しかもそれらの装置が電気仕掛けによる機械的操作であることをガウディは示唆していることから、また装置の納まりにも問題が広がる。 |
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“幻の鐘”の謎を解くために、日西の共同プロジェクトスタート |
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文献の解釈にまだ再検討の余地があることから、念の為に私は各方面の専門家達と相談した。結果、バルセロナ工科大学機械工学部と建築学部のキム教授達、日本側からは福岡の友人でガウディの幻の鐘に興味を示してくれたデザイナーで彫刻家
藤野氏の協力を得て九州芸術工科大学(現在:九州大学芸術工学部)の吉川教授達、そして私が設立させたガウディクラブ文化協会の三者で共同研究することに合意して2003年3月にその協定を結んだ。
これによってガウディ建築における科学的な謎解きが本格的に進められることになる。
“幻の鐘”謎解きの提案者である私は、責任を感じてシャーロック・ホームズのように虫眼鏡(私はもう老眼鏡をかけるようになってしまった)をもってその要因となるデータを整理している。
ガウディの考えていた筒状の鐘を検討するために、整理中のデータと実際の模型として残されている一本の鐘、当時の鐘の模型写真の三つを比較する中で、相互に違いがあることに気がつく。 |
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