言語は、3才頃までに定着するというが、創作への関心も同時期に生活環境の中ではぐくまれるとすれば、ガウディによる”幻の鐘”の発想と音への関心はこの幼少の頃に由縁するということになるのだろう。
そこで彼の幼少時代に父親の鋳掛け職の環境とその周囲の自然環境ということに注目する。
父の鋳掛け工房は、バイシ・カンプ地方のリウドムス町にあった。
この町はガウディが洗礼を受けたサン ペドロ教会のあるレウス市の隣町である。レウスでは中等学校までを過ごしている。しかし関節リウマチを患っていたガウディは、友人達との付き合いよりも父の工房と自然との接触に興味を示していた。多分に父の鋳掛け業の創作過程による影響が大きかった為に、ガウディは、音に関しては異常なまでに繊細だった。
空間性に関してもガウディが言うところの“天使の3次元的視点”はまさに銅版から鍋釜に叩き上げながら作られていく様子を示している。私でもその過程には興味がある。
このプロセスには当然音が伴い、形によっては音色が変わると言うことも自然に身に付いていたことは疑う余地はない。
それが音による建築空間となり、夢のゴシック教会では“幻の鐘の音”が聞こえる計画をすることになる。
さらにその音源となる“幻の鐘”は、ガウディの唱える“幾何学の父である放物曲線”を利用した形として、双曲面体による筒状の鐘に発展する。
この双曲面体の筒状の鐘とは、円筒状の餅の両端をもって引っ張ると中央が細くなるが、そのような形。又は筒状のゴムを捻ると中央が細くなるがこれも同じような形となる。
そのような形状を生かして作った筒状の鐘ということになる。 |