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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

テレサ学院から始まった立体十字架

ガウディは、
スタイルの勉強は教会の勉強である。
メソポタミアやペルシアは、君主の大帝国で神格化し、そのためには神殿を造った。

とスタイルについて語っている。

ガウディの得意とする立体十字架は、このテレサから始まっている。まさしくこの原型はゴシック建築の尖頭にヒントがあるとみた。
そこでこの十字架に近づいてみる。はじめは何をモチーフにしたのか解りにくいが、ガウディが自然主義という愛称で呼ばれていることからすれば、自然界にモチーフがあるということでテーマを絞り込む。
するとテレサに関するシンボルが浮かび上がる。聖女テレサはキリストのテレサとも言われている。宗教に関する植物をモチーフとすると最初に浮かび上がるのがロサリオ(数珠)、つまりローズが語源となっていることからバラということになる。
ガウディの作品の中で、このバラをモチーフにするシーンは、殆どがリアルに取り込まれている。それにも関わらずこのテレサ学院では見当たらない。と思っていたが、入口の鍛鉄の門扉にイバラの冠がつけられたハートのモチーフがあった。ところが花はみられない。ガウディのことだからきっとどこかにその花は利用していると信じていた。そこであの得意の立体十字架に応用されているのかもしれないと思って観察してみた。しかしどう見てもバラの花は見当たらない。それでは見方をミクロにして観察してみる。すると十字架の形を花びらに展開させて立体十字架にしているのではないだろうかと思いはじめた。普通であればバラの模様にバラの花の形がモチーフとなっていることが多いが、ここではその花びらを利用した立体十字のデザインに展開しているという見方だ。その立体十字になっている4本の腕と頭の先は植物の頭状花のようなモチーフになっているが、それを囲うかのようにバラの花びらを利用した立体十字架としての組み合わせとしているということに気がついた。
つまりキク科の花序とバラの花びらを合成した立体十字架ということになる。スペインはひまわりの産地でもある。そうすればスペインとキリスト、つまりカソリックということはカソリック王国であったスペインをこの十字架一本で表現していることになる。
まさにガウディ・デザインの匠をこの十字架でみせているのでないだろうかと思えるようになった。
温暖な地中海性気候に色鮮やかなひまわりとバラのデュエット。その中で聖女テレサが布教と教育につとめたその姿を、このテレサ学院に演出していると読み取れる。オッソが言うように、バルセロナで唯一オリジナリティーの強い学校である。そのバルセロナの街は地理的にも海に面しているということもあって対外的交流も活発だ。
歴史は文化を作り都市や人々の生活に刺激をもたらす。

文化は歴史によって育ち築かれるものである。産業革命の影響を受けながらもスペインやカタルニアの産業が開花し始める。バルセロナの街がスペインの中でも特に文化が開花し19世紀末のモデルニズモによる芸術家達も集まったところである。それを庇護するエウセビオ・グエルであったりコミージャス侯爵アントニオ・ロペスがいた。彼らの業績が生活の産業に大きな影響を与え、彼らの行った船舶業による対外貿易、そして国内での繊維工業の促進が始まる。
     
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