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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

成長の道は繰り返しに限る

建築家セサール・マルティネールは、ガウディと接触を交わして会話を残した。さらに1967年には「ガウディ、人生、理論、作品」を執筆している。また1969年に執筆された「ガウディとの会話」は人間ガウディを知る上で貴重な本の一つである。その会話集の中で、
「ガウディはいつも親切にしかも家族的に受け入れてくれた。ガウディは彼の理論、教義、彫塑性に対して情熱的な人であったことを知って頂きたい。 更に正直な人で彼の感情を弁明によって曲げたりはしない。提案しなくてもガウディの言葉は建設的で、教室で教わるよりはるかに興味がある人生や建築の教訓であった」。
と説明している。?
さらにガウディの言葉として「人間の手による物は何一つ完璧なものはないので、全て完璧にする余地がある」と言い残している事が非常に印象的である。
建築技術において、補強に関して「補強建設は最も合理的である。全ての建物を分析するには困難な動き(膨張、収縮)と振動が計算される。これら全てはせん断に対する補強なのである。」として鉄筋コンクリートの特性を認識している。しかも建設において「機械室の為の建設は振動が重点である。この振動を吸収する方法を見つけなければ基礎に歪みが生じ、機械の機能は異常をもたらす(軸と受け軸がこすれる)。よってこの建設には鉄筋コンクリート造が適正である。それは断面の、鉄を基にするセメントが重要な核になる。」とコメントしている。ガウディ時代には既に鉄筋コンクリートは存在し、彼の友人でありパトロンであったグエルは1904年にセメント工場を建設していることからも、ガウディにとっては身近な素材でもあった。にもかかわらず、ガウディは執拗に石灰モルタルを重視していたのはどうしてなのだろうか。作品づくりにおいて「成長の道は繰り返しに限る。」というのは知られている。つまり日常生活のように間違いのない繰り返しからの改善を示唆している。職人的な立場で切磋琢磨することなのだろう。

ガウディ建築の中で技術、素材、形態、さらに空間と色彩の演出効果とパフォーマンス性の強い作品はグエル公園に限る。この膨大な広さの中で建築作家としての匠の技を見せているのは参考になる。
中央門の両サイドにあるパビリオンと幾何学構成は、色彩と光の調整を配慮させ、さらにファサードは自然な配慮なのだが、それを利用する人達に違和感をもたせないような気配りもされている。まるでおとぎ話に出てくるような建物としても評価されているが、建築作品としては絶妙な建築配慮をしていることが随所に伺われる。

ドーム型の屋根と破砕タイル仕上げ、階段室と排気塔、ファサードと45度の波状破風、開口部の膨らんだ鍛鉄格子、破砕タイル仕上げの窓枠、どれもが私の目に真新しいものばかりである。決して文化や国の相違ということからではなく、彼の発想の展開が地域の歴史性を踏まえてオリジナリティーを付加させていることがスペインの土壌からも伺える。
     
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