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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第162回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

人間工学に基づいて制作されたベンチ

グエル公園の中央門にある鋳造格子扉は、棕櫚(シュロ)の葉をモチーフとしている。これはバルセロナのカロリーナ通りにあるカサ・ビセンスの柵としてガウディがデザインし、模型職人ジョレンツ・マタマラが模型をつくり、ホワン・オニョスによって鋳造されたものである。その後、所有地売買によって従来の敷地が縮小され、1965年にその柵の一部が公園に移築されている。
今ではすっかりグエル公園に馴染んでしまっているのも不思議である。
公園の施工当時の写真からだと、以前の門扉は仮設の柵のような木製の縦格子門扉であった。
公園計画が中断になった1914年以降は、既にガウディによるこの公園のデザインは途絶えている。もしこの公園が本来の田園都市として完成していたらどのような中央門になっていただろうか?

この公園の工事年表からすると, はじめはフリアン・パルドが1907年まで工事請負人となるが、以降はアグスティン・マシップがサグラダ・ファミリア教会の現場を請負っていることから、彼によるグエル公園工事の参加が考えられる。しかし、明確には誰が1914年までの工事を続けていたのか解っていない、とバセゴダ博士は「巨匠ガウディ」の中で記している。いずれにせよガウディ手法が理解できる業者でなければ、この公園の施工は継続できなかったであろう。特に蛇行ベンチの工事は1913年まで続いていたとされている。
この多柱室、広場と蛇行ベンチは、公園のメインとも言うべき場所であり、新に考案されたプレファブ技術を取り入れての複雑な工事であったことから、その手法を熟知している職人でなければ施工は不可能である。
とすればサグラダ・ファミリア教会の施工業者のチームが公園にやって来て施工していたといことになるのだろうか?
これも今後の研究テーマとしては面白い。
他にも蛇行ベンチの役物のタイルに注目すると、不思議なメッセージのようなものが記されている。建築にメッセージを記すという行為は、ジュジョールによるものだとされている。しかしその行為がジュジョールによる行為だとしても、ディレクターであるガウディの承認なしで実施されたとは思えない。
つまりガウディの十八番の様にも見える詩的な単語が並べられるとそれは祈りとなり、しかも謎めいてはいる様にも見えるのは私だけだろうか。
中でもSos ulls-M-Ab、「あなたの目」、maria-de esteles-tota plena-M「星のマリア、マリアの受胎…」と言った様に1964年の時点ではまだ他にもメッセージはあったが、その後の修復で大半が消えている。
それらのメッセージは蛇行ベンチの笠木の部分や腰部の膨らんだ役物の所に描かれている。
このベンチの形を作る為に生体実験によって型を作ったとされている。
確かに座ってみると背もたれも破砕タイルで仕上げられているにもかかわらず違和感なく包んでくれる様に背中がフィットするし、腰の凹みも役物の凸部分にフィットする。

しかも座板の高さも40cmと座り易くなっている。
     
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