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フィンカグエルのドラゴン |
他のバイトも考え、結果、模型制作による収入源を思いついた。そこでさっそく“盆庭”に簡単な茶室建築をバルサで作り、街の小物店や日本レストランなどに行商人のように売りに出た。一つの模型を作るのに最低1週間はかかったが、売れ先は殆どが心ある友人達で、その売価格は3000ペセタであった。
ある日本レストランに売り込みに言ったときのことである。
店の旦那は“売ってあげるのだから一つはプレゼントするのが当たり前ではないか”となかなか厳しい対応であった。ところが脇にいたレストランの番頭Kさんは、後で、そっと私に近づいてきて友人にプレゼントするからと言って2個も買ってくれた。その気持ちは涙が出るほど嬉しかった想い出がある。
そんな内職は、夕飯の後にしていた。しかし生活と時間のバランスが合わずその盆庭製作も10個でおしまい。
昼間のバイトは、相変わらず、フィンカ・グエルの作図作業が続く。
古文書から当時の写真を見つけた。それによるとこの門番の家の煙突がオリジナルとは違っていた。二階の廊下部分にある回廊式窓も当時は開いていたが現在では煉瓦で塞がっていたのである。建築の場合は、長い年月を経過すると時代に応じて用途や設備も変わりそれに応じたデザインと機能に改造されることが多い。その中で基本となるデザインの意図が何をベースにしているのかを探るのが歴史的建造物調査のキーワードとなる。 |