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建築家トップ > バルセロナ便り > 第202回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

時代に応じた建築様式と素材

ガウディは形について
「円筒状の建築スタイルは、堅く不活性な塊であって安定性とは関係なく光には障害となるものである。その堅さと結合にはフープ(帯)、縦溝、モールディングによって種類が与えられる。曲面を使う理由は、モールディングを必要とせずそれ自体が場所に応じて適応し、塊や不活性なものを避け光りも多く取り入れ音響も良くなる」
とコメントしている。
歴史的建造物のキューポラや中世建築のドームでもみられるように、洞窟や渓谷で見られるような自然形態の特性についてのコメントである。それをガウディは煉瓦による建造物で再現した。なかでもグエル公園の多柱室やサグラダ・ファミリア教会の身廊の建築スタイルに反映されている。

建物は人々を自然現象から保護するためにあり、音響と機能の両面を反映させながら人間の生活を保護しているはず。しかしその建築がまるでおもちゃのように地震に崩れ水に呑み込まれ、しかも容易に水の力で流されてしまう。その現実を目の当たりにどのように建築は対処しなければならないのだろうかと考えさせられる。
人によってはすぐ高台に避難することや住環境もそちらに移動する事を考える。それも自然な対処の仕方である。しかし高台に避難したところでプレートのずれによる地震ではそれすらもどうかとおもってしまう。
そこで、現状で今回の災害に対応できる建築がありえるのだろうかと考える。その答えはどうなのか。

建築作品の実測と作図をして感じるのは、時代に応じた大きさと様式があるということ。さらに素材も時代性を反映している。
例えばローマ時代とゴシック時代の組石ではサイズの違いが一目で分かる。昔に遡るほど礎石の石が大きく、次第に時代を経ることで文明が影響するのかサイズが小振りになる。現代では積みあげるというより張り上げる技術に変えられているほどである。表面的には重く見えても、構造においては鉄骨やコンクリート造に替えられて合理的ではあるが全体的に軽くなる。
現在では施工図にまで予め指示され、準備してから施工に入るというのは常識となっている。ところがガウディの建築施工においてはその常識が覆されるのである。

中でも代表的なサグラダ・ファミリア教会では、完成予想の姿もガウディさえ明確にしていない。しかも装飾的な彫刻群をどのように作図ができるのだろうかと考える。今では施工図という作図である。ここでは詳細な納まりと施工方法まで示される事さえある。
ところが動植物模様のレリーフや彫刻の場合、施工図に描くには困難が多すぎる。そこで彫刻家や石工に作業がまわされる事になる。しかも模型をつくるとなると模型職人まで関わる。
このようにして三段階または建築家を含めると4段階のステップを踏む事で装飾的な納まりが決められる。設計者だけでは作業は進められない。

ガウディは自ら模型を作る事もしていたというがどこまでの作業かは明確にされていない。それでもエプロン姿のガウディが模型を手にもった作業風景のホワン・マタマラによるデッサンが残っている。
     
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