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建築家トップ > バルセロナ便り > 第203回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

作図から転写翻訳へ

ガウディは、学生の頃からエドワルド・プンティ工房に出入りしていた。そこには大工、鍛鉄、建具、模型とバリエーションがあった。しかもその工房でガウディ生涯の協力者で模型職人ジョレンツ・マタマラとの出会いがあり、サグラダ・ファミリア教会でも人生を共にすることになる。
他の民間建築の模型作りもこのサグラダ・ファミリア教会で行われていた事も伺われる。つまりこの教会の模型工房が、ガウディの建築を計画していたことになる。現在の模型室展示会場にはその当時に作られたカサ-バトリョの束柱の原寸模型をはじめとして、ミラジェースの門の屋根瓦の原寸模型やカサビセンスの鉄柵の棕櫚の模型なども見られる。

ここでガウディが模型を重視した一面を考察してみることにする。
各動植物のボリュームなら図に描く事はできるだろうが、仕上げを描くというのは凡その形でしか表現できない。つまり施工上で予め準備することができない部分もあるということに気がつく。
そこで装飾的で彫刻的な部分は、彫刻家、石工、模型職人達にまかされる。ガウディは自ら模型も作り作図による時間の節約をしていた。模型は立体で理解できるが、作図では立体で見え隠れする部分を表現するのにかかる時間は計り知れない。つまり、たとえ立体図にしても限界があるわけだ。

さらに曲面体となれば影とトーンの表現でグラフィック的には表現できても、アバウトな表現でしかないので模型にはかなわない。だから曲面を作図するというのは特に手こずるわけだ。

ガウディ初期の作品は、ゴシックに影響されたような直線と回教徒様式によるセラミックとレンガの組み合わせでありガウディの建築特性を高めている。そこでは伝統的な様式だけではなくさらに神話や地域やオーナーのアイデンティティーが芸術作品として演出されることになる。
フィンカグエルでの煉瓦造と幾何学的なパラペットや鍛鉄扉では神話が盛り込まれ、よりオリジナリティーを高める。しかもミステリーも増幅している。するとガウディの神秘が動植物と幾何学を駆使してより不思議の世界へと導いてくれる。ミステリックなものというのは好奇心への活性剤であり、芸術作品としての在り方を増幅してくれる。
そこが作家達の居場所であったり、安堵感さえもあたえていることがわかる。私の作図作業中でグランドや建物の目地を描いているときは、単調で瞑想の時間となる。全体の作図ができあがりグランドラインをいつものように最後に描き、タイトルや分類、作図を終えた日付なども明記する。

ラフデッサンから始まって作図を終えるまでの時間は私の時間なので、だれも入り込めない。雨が降ろうが槍が降ろうが途中で辞めるわけにはいかないと思い込んで今まで描いてきた。
2000年からは、それまでやり残していた原書の転写翻訳に専念してきて現在もつづけている。今取り組んでいるのはカタルニアバレアーレスの建築家協会から出版された、セサール・マルティネールが1967年に執筆した「ガウディ、人生、理論、作品」で527ページもある本である。現在ではようやく153ページまでたどり着いた。

現在転写翻訳をしている。
     
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