これらの煉瓦施工でもっと信じがたいことは、ある程度までドームが仕上がると、その歪み止めとしてセメント袋や砂袋が置かれて歪みを抑えるということだ。その話を伝統職人から聞き、現場を見たこともある。
信じられないような施工法であるが現在でもスペインでこの伝統工法を利用する場合は、昔と同じような工法を継承しているのである。
確かに、施工中に職人達は階段のボールトでも同じように荷重のかけられるものを載せる場面をよく見ることがある。
このような視点からフィンカ・グエルの調教場の場合を検討すると、直径約10mの大ボールトの施工では、このような手法を三ヵ所の煉瓦造のリングでセメント袋の代用として機能させていることになる。つまり、飾りではなくボールトの歪み止めとしての機能と越屋根窓のメンテを考えた階段としての役目も兼ねていることが理解できるようになる。
このように巧みな煉瓦によるボールト施工に感心させられるが、ガウディの建築技術の巧妙さはそれだけではなく数え切れないほどある。
実はそれが私の研究を続けている原動力になっている一つの理由になっている。
ガウディは壁の構造について“経験的に伝導性の悪い成分で詰められた壁は、空気が詰まった塀や空隙の塀より断熱性が高い。詰め物は、スポンジ性(この場合は腐葉土)で密度が低い(塀の仕上げ面に僅かな水平力がある)いずれにしろカンナ屑又はコルク、砂利は更に良い。”と言っている。 |