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建築家トップ > バルセロナ便り > 第213回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

素材の特性を知ってこそ良い建築家

ガウディ建築初期の作品で1878年に計画されたマタロ労働組合の作品が現存する。木造で断面の厚さ8cmx幅22cm、貫材のような素材を三層に重ねてボルト締め、それでカテナリーアーチを描く。

日本の木造建築では仕口で組み合わせて土台、梁、柱等を組み上げる。
宮大工西岡さんは、建築に利用される木というのはその利用する場所に応じるという。その方位に相応しい木を探すために山へ行って同じ方位にある木まで探す。木にしてみれば利用される場所が自分の育った場所に近いものであれば素直にその場を維持するという概念になるのだろう。
まさに「素材にも魂あり」という見方かな。
ガウディの素材利用の仕方も場所に相応しい素材の選択というのがある。例えばグエル公園の破砕タイルを利用する意味は、まずは躯体を保護する為の防水加工を施さなくてはならない。次に曲面体等の防水をする為には破砕にする必要がある。そしてその面積が広い為に既成のものであれば高価となる事から、廃材を利用する。しかし廃材であれば色や模様が揃わない。そこで考えたのは作業の順として廃材の色分けからはじめる。柄違いの模様に関してはガウディや協力者のジュジョールによってデザインが施される。
それまでなかった全長250mの破砕タイルによる蛇行ベンチの完成となった。裏と表があるので、その絵柄模様の全長は500mとなり、不思議なアートの世界が展開されている。しかもベンチの形は人々が座るという機能からエルゴノミックなデザインにするために、生態実験として生きた人間から石膏型を抜き、その形を利用しながらベンチの形を決めたとされている。確かに座ると背中と腰がこのベンチの背もたれにフィットしている。堅い素材なのに柔らかく感じてしまう不思議なベンチと言える。
現代建築では「急ぐ建築」が代名詞になっているようで、じっくりと考え抜かれた建築というには乏しすぎるほど冷たく感じるのはなぜだろうか。

先日昼のニュースで、バレンシアの建築家サンティアゴ・カラトラバが計画したバレンシアの科学館補修計画が、訴訟問題となっていると告げていた。その修復に3億円以上かかるという。修復費用を建築家と施工業者の間で賄って修復する方向に進められている事が知らされていた。
建築家の大胆なデザインと気候風土の絡み合いに問題が起きて、鉄板の表面にはられたセラミックが剥がれてきたというのである。スペインのような気候で、しかも夏場の温度が場所によっては50度を越えることすらある土地である。鉄骨に直接貼られたセラミックタイルは、一時的な見栄えは良いが収縮率の異なる素材の反発を考慮していない。鋼材は熱に弱いことは誰でも知っているはずだ。それを承知で炎天下、しかもほぼ露出状態の鉄鋼造の建築では、鉄材の身の毛もよだつほどの動きがあるということを今回の建築劣化で見せつけられたような気がする。

カラトラバの素晴らしいデザイン性とは裏腹に、建築家としての基本的な素材選択欠如の一面を見せたのではないだろうか。彼もガウディを尊敬しているという事は新聞記事で読んだ事がある。その素晴らしいデザイン性の他に建築家としての本質的な面をしっかり地固めしなければ、同じような事故を繰り返すことになる。
     
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