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建築家トップ > バルセロナ便り > 第245回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

ガウディの建物は螺旋状?

気になる捻れの特性を建築に取り入れたガウディは、どんな理由があって建築に利用しはじめたのだろうか。
通常捻れといえば健康的な障害を引き起こす原因となるストレスの代名詞のように言われる。ところがこの捻れは、螺旋状の運動形体とすれば物理的な作用もある事が見える。最近の電化製品の中で、掃除機でも構造にこの螺旋状に吸引させるための円錐のケースを利用し、その吸引力を増すことを説明している。
ガウディにとってこの円錐は、”幾何学の母”でもあるとしている。点から始まり、三角形、円、楕円、放物曲線、螺旋形までもおさまっている。その形を物理的に利用することで、建築になったり生活の機器になったりするという応用展開も考えられる。
その螺旋、または捻れが建築に利用される形として、サグラダ・ファミリア教会では中央身廊の柱形状が二重螺旋で構成されていることを、模型室でも説明している。以前,日本から構造専門家であり私の先生でもある故田中輝明先生がバルセロナにやって来た。先生は彼による螺旋つまり捻れの特性は断面二次半径を向上させるといっていたことを記憶している。つまり物理的な自然現象として、捻る事で素材の強度をますことを意味している。紐で繊維状のものを引っ張る事では、その断面の大きさと素材によって耐力がさだまる。ところがその素材を螺旋状に捻る事で、さらに素材の強度をますことになることはだれでも日常生活で経験済みである。しかしハテナと思う人がいるかもしれない。
物質である限り、物質内部で互いに接すると摩擦が生じる。その摩擦抵抗が耐力に置き換わるのである。つまり捻る事で物質の中で摩擦が生じて弾力性と強度をます。
その特性をガウディは細長い身廊の柱に生かす。しかもそれらの柱は樹木の幹のように捻れ特性を生かし、上部ではカテナリー曲線上に枝分かれして中央身廊の天井のボールト天井を支えている。
例えば一本の棒よりは2本の棒、二本の棒よりは三本の棒そして三本の棒よりはロープのように捻れる方がより摩擦抵抗と二次半径の向上に繋がる。また物質というのは、動物の骨の形などでも見られるように捻れた形によって剪断抵抗を高める。
木の成長は幹が捻れながら成長することで枝葉のつき方が互い違いにつく事でも理解できるはずである。
他に自然現象の竜巻と同じように螺旋状に動かす事で物質の移動加速が増しやすいということなのだろう。川底の石も水の流れにしたがって他の石との衝突や摩擦で角が削れて次第に丸くなる。このように物質の世界は尖った物質の存在を拒絶するかのように丸みが本来の自然なあり方だと教えてくれているのではないか。
日本庭園で利休が角張った水鉢の角を削り取るエピソードがある。これも精神的に、また視覚的に角が立たないようにする為のデザインだということを日本建築史の竹島卓一先生から聞いた記憶がある。

ガウディの作品を一言でいうと螺旋状の建物と言う表現にすると大変な誤解を生じるかもしれないが、私達の骨も捻れている。そして自然界の物はどれもが曲面であるのはどうしたことか。この形を流線型というと可笑しいだろうか。
     
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