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建築家トップ > バルセロナ便り > 第246回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

自由な発想と現場監理

形あるものを創作するときには、通常用途に応じて計画する。自然界での創作というのは、例えば空気抵抗を最小限にしている自然のフォルムで代表されるのが鳥達、水抵抗を最小限にしている自然のフォルムは魚達となる。
それら自然界の曲面体を生かして人々は今までに、飛行機や潜水艦や船等の形を産み出して来た。そして武器も形としては点からはじまり、平たくしかも鋭角というさらに空気や水の抵抗を抑えるような形で殺傷効果を高めて来た。物騒な話しだがその意味では料理に使用する包丁、フォーク・ナイフ、箸も武器となったりする。

建築の世界では、形においてどのような変化がおきているのだろうか。
洞窟の生活空間や竪穴式の居住空間からはじまり、人々を保護するような素材として木の枝や葉、草等で覆う事をしてきた。今ではコンクリートや金属、タイル等で屋根を覆うような時代になっている。
ところが人々が生活する空間は、その昔から利用していた曲面の空間からいつのまにか矩形の平滑な面に慣らされてしまっている。
それが現代では当たり前としてまかり通っていることに疑問を抱いている。
カサ・ミラの建物が穴居建築に見える等と言う人もいれば、ピレネー山脈の岩にも見えたりモンサン山脈の岩場に見えたりとそれぞれの経験に基づいた視覚的残影にしたがった感想を述べる。

芸術の面白さは、この自由な表現を寛容に認める事にあると言える。
しかも建築では、ガウディさん、非合理的な窓の形とサイズを平然と作らせているのである。これは図面と言うより彫刻模型からの拡大でもしないことには困難な施工であることは推察できる。
ガウディ当時にその10分の一の模型を設置していたと言うリファレンスがある。つまり凡そ20uの面積の図面の中に、直径1mの円形パティオと1.5m x 0.8mトラック型のパティオを描くことになるが、そんな大きな平面図さえも一枚の板の上では手が届きはしない。
そこで作図を担当したカナレタとガウディの間に交わされた会話では、
「アントンさん、こんな大きな板の上に定規をもって上がれません」というとガウディは「それよりももっと簡単な方法があるよ。板の真ん中に穴を空けて貴方が下から入り、それで図面全て描く事ができる。」と言うエピソ−ドが残っているほどである。
このエピソードはカサ・バトリョとカサ・ミラの施工を請負ったホセ・バイヨ・フォンとバセゴダ博士との1970年1月に実施されたインタビューによって残された記録による。この他にも職人達との作業のやり取りが伺われる。つまり現場管理はほとんどガウディ直接の指導監理になっているということである。
まさに毎日のワークショップから産み出された素晴らしい作品となることを裏打ちするようでもある。

カサ・バトリョの工事ではバセゴダ博士がバイヨに「誰が作業監理していたのですか?貴方達は既存の建物があってしかも改修しなくてはならないという事を知っていたはずで、工事では誰が引き受けてどのようにしていたのでしょうか?」と尋ねる。そこでバイヨは「指示は、ガウディ氏から全て受けていました。しかもバレンシアのタイル仕上げ(カサ・バトリョの仕上げ材)でも同じで、パティオの改修も同様です。これら全てをガウディ氏が指示していました。」と答えている。
     
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