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建築家トップ > バルセロナ便り > 第269回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

周囲との調和を大切に職人達と共に作り上げる

ガウディと協力者達や職人達との仲はどうだったのだろうか。
ここで建築家ホセ・バイヨ・フォンというカサ・バトリョとカサ・ミラの工事請負業者の話が登場する。
「詳細施工について、出窓の柱は大腿骨のようなもので彫刻家によって施されたのですか」とバセゴダ教授は尋ねる。するとホセは、「ガウディの描画をベースにしたものであるということは、我々がその絵を持っているので確かです」と答えている場面がある。
このシーンも、現場においてはガウディのスケッチをもとに施工業者が施工を進めていたことの裏付けになる。この会話の中ではガウディの性格性に触れている場面がある。特にカサ・バトリョの隣のカサアマジェとの関わり合いを気にしての対応だった。
最初の計画ではファサードを隣と揃えることで対峙することから、「プーチの建物側の一部の階を後退させ、そこから塔の下部が始まることで、プーチの破風の段状がファサードを完結させる。しかもカサ・バトリョとの緩衝を緩和することができ、それで他の建物とは隣接していないように見せることができる。彼は隣を悪化させるのを防ぎ、我々もこの塔や出窓といったように楽しむことができる」としていた。
さらにその対応から「ガウディ氏は親切で良い人です。しかし正しい事でなければ怒り、怒鳴る事はありませんがむしろその逆に皆より声を低く、よりすごみを効かせていました」とホセはバセゴダ教授に説明している。

職人とのやりとりの中でガウディの気配りの一面が覗かれる。この様にしてガウディ建築の作品は作られていたのである。
つまり職人達とは仲良く2人三脚で作品を作り、彼自らも作業に従事しまた模型製作などの作業も進めていたことは、彼の協力者であったマタマラの『ガウディとの道程』や描画家オピッソの絵の中にガウディの模型作りの姿が描かれていることからも伺われる。
模型を作る時には職人達と一緒の環境で作ることになる。エプロンをかけたガウディの姿。石灰の粉や濡れた石灰が体にかかる。勿論、石灰で汚れた手が体に触れて汚れることもあったはずである。特にガウディは髭を伸ばしていたので髭にその石灰による汚れが想像できる。

職人達と作業しながらの日常会話はとても面白い。日常生活のことから始まり仕事、政治、芸術、思想、多岐に渡っての会話となることは私も経験したことがある。
作図作業との大きな違いは、一つのことを数人の手作業で組み立てたりするので、そこには会話が弾むのである。
ガウディの話は芸術論が中心だとされているが、その前に彼のジョークも飛んでくることが知られている。特に仕事が始まる時の会話では、ジョークが先に飛んでくるという。

彼の作った作品は話題性の高い作品ではあるが、その中で職人達の楽しいやり取りとジョークを交わしながら作品作りを進めていた姿を想像するたびに、その気配りが作品にも反映されていることにも気がつく。
     
田中裕也氏プロフィール
 
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