精神世界や神話を建築に現そうとする、合理性と相反する本能にも似た欲求 
                  
                  ガウディは“我々の力と美しい形の卓越性は、感性と理論の均衡にある。”としている。 
                  ガウディは彼の建築作品の中で、この感性にしたがってオーナーに因んだ具体的な表現である神話や、宗教的シンボルを利用するアイデンティーを演出し、さらに独自性を示唆しているかの様でもある。
                  フィンカ・グエルのドラゴンとその尻尾についている針の付いた玉はまさに星座の表現としても読みとれる。守衛としてのドラゴンの、針のついた玉によって外敵を脅迫するように、ヘスペリエスの園を守る演出なのだろう。 
                    鎖で繋がれているのは明らかに猛獣を人為的に操っている情景と言える。 
                  そのドラゴンを支えている煉瓦造柱の尖塔には、リンゴの木ではなくオレンジの木が飾られている。しかも外壁の鱗状のタイルもドラゴンの体の一部として表現しているとして見ることもできる。 
                    あまりにも具体的な鱗状の模様は、動物の他にもスパニッシュ瓦または丸瓦を積み上げることでもその模様は描かれる。その断面はまさにこの鱗模様が出来あがり、日常見られる模様ということになる。同じような形は椰子の木の幹でもこの鱗模様になっていることがわかる。 
                    つまり自然界の動植物の観察から、このヒントは得られると言えることになる。 
                  フィンカ・グエルでは、ベルダゲールの話しに合わせたヘスペリスの園を建築的に演出したと言うことになる。 
                  このギリシャ神話の物語が建築に表現されているとすれば、ガウディの1873年から1879年に書き残した手記が1883年から1887年にかけて作られたフィンカ・グエルで花を咲かせることになる。 
                    そして建築全体がドラゴンの演出だとすれば、さらに鱗状のタイルが理解し易くなる。 
                  このように単に建築様式への踏襲という一般的概念では処理できないかもしれないが、ガウディの手記にも表されている“神話をはじめとする歴史、宗教、物語、詩”などとの関係が見られるのである。 
                     
                   
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