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建築家トップ > バルセロナ便り > 第273回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

求めたのは単なる装飾に留まらないデザイン

カサ・バトリョの内部が水中のようなまたは何かの体内的演出なのか、それとも偶然か作為的か。この問いに対して、ガウディの感性として一言で言い切ってしまう人もいるかもしれない。
その内部空間には色もある。色は人による好みもあって、ガウディの場合は青色が多いのは、彼の好みなのかそれとも偶然なのか、それとも作為的なのかということになる。
大学生時代の卒業設計バルセロナ大学記念講堂、グエル別邸、グエル公園、カサ・カルベ、サグラダ・ファミリア教会誕生の門なども確かに青が基調である。
この色にはどのような意味があるというのか。地中海の海や空の色の演出として洞察できるが、それではあまりにも感覚的で曖昧である。
ガウディの建築演出による装飾概念からすると、色にも彼のポリシーがありそれが建築と関連することになると定義すれば、どのような関連事項があるのだろうか。
またカサ・バトリョの正面ファサードを見ると、外壁面のファサードの破砕ガラスに着色をしている。そこでも同じように青色の破砕ガラスとステンドグラスがベースになっていることに気がつく。特に2階のギロチン窓のステンドグラスにも、青と緑系のボトルの底のような丸いガラスがはめ込まれている。つまり窓の上部からの青系の光が内部に差し込むことで、天井内部にも円状の青系の光を引き込むことになる。青や緑系のガラスによって天井レリーフを際立たせることにもなる。色の他にもそのギロチン窓の前にある束柱が単なる束柱ではないことに気がつく。しかも大腿骨のような骨の形をした柱であり、その関節のような部分が支柱の中央部分に設定されている。そこにはさらに植物模様のレリーフがつけられているのである。誰が見てもその部分は単なる装飾であるようにしか見えない。私もそのように実測を始めた時は思い込んでいた。
ところがガウディの手記と彼のデザイン手法から洞察すると、それ以外の意味があることに次第に気がつく。それも10年越しでようやくその意味がつかめるようになったのである。
建築演出というのは単なる作家の気まぐれや奇異だけを狙ったものだけでは済まされないことをガウディの会話や手記から読み取れるのである。
とすればこの装飾に見えるレリーフはどのような意味があり、その柱が何故に大腿骨のような骨をモデルにする必要があったのだろうか。
そのギロチン窓を支えている一階の中央の2本の柱をよく観察するとまた不思議な形に気をとられてしまう。このカサ・バトリョの建築の中で唯一この中央2本の柱だけが他の柱とは形が全く異なる。柱の下部は柱礎という姿ではなく支柱と一体化した、しかも有機的な形となっている。つまり動物の足にも見えるしまた爬虫類の足の姿にも見えるように抽象的な表現になっているのである。
さらにその2本の支柱の中央は捻れるような線によるまるで一刀彫りで削ったような動的な削り方にもなっているのである。デザインのあり方にもその詳細がどんな意味でそのような形にする必要性があるというのだろうか。

これを「気まぐれに削っただけ」と思うのはほどほど見当違いであるということに気がつく。
     
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