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建築家トップ > バルセロナ便り > 第276回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

サグラダ・ファミリアに中世の建築様式を取り入れた意味は?

ガウディが採用する歴史上の建築詳細には、時代を反映する演出がされている。例えば螺旋階段は、機能上、武器とか物を運ぶ時、狭い空間でも中央に柱がないために運びやすくなっているという特性がある。しかも中世時代は、長い武器などを運んだりしていただろうからなおさら都合が良い階段となる。他にサグラダ・ファミリア教会の内部には中央に穴の開いた部屋がある。エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュクの執筆した「Dictionnaire de l'architecture française du XIe au XVIe siècle (1854-68)」という本を覗いてみると、確かに私が実測したサグラダファミリア教会の螺旋階段と同じものが紹介されている。また中央に穴の開けられた部屋も当時のお城の塔の中に配置されていたりする。中世時代の床の中央に穴の開いた部屋の用途は、居住空間というより牢獄に使用されていたのである。

牢獄と教会はどのような関係があるのか。そこで思い浮かべられるのは宗教裁判である。当時の宗教にそぐわないものたちがことごとく牢獄や懲罰を受けていた。というのである。ではガウディはその意味を含めた部屋を鐘楼内部に設置したのだろうか。
しかしガウディの時代はすでに中世や戦国時代ではない。民主化運動が起きていた近代に作られていた教会であり、すでに宗教裁判などもなくなっている。
それにもかかわらずその牢獄にも類似した部屋を、しかも2本の鐘楼で合わせて11部屋を設けている。
反教会主義者達を収容する部屋とすると、さらに話は小説化してしまうのでこれ以上は進めない。でも何のためにこのように部屋の中央に穴のある部屋が必要だったのかと私は探り始めた。これらの部屋の最上階の上部を見上げると、曲面体による仕上げでボトルの首のようになっている。その首は一箇所スリットが設けられている。このスリットは規則的に配置されていることがわかった。例えば誕生の門の中央2本の鐘楼内部のスリット部分は、左右30度に向けて開いており、その二箇所のスリットがなす角度はこの門の中心に120度の角度で外に向けていることがわかる。
一方で両端の2本の鐘楼内部のこのスリットの開口部角度は内部に向かって垂直つまり90度で向けている。

それらの方向に向かってそのボトルの屋根部分のスラブが、段状にそのスリットの方向と同じ方向に傾斜が付いている。説明だけだとわかりにくいので作図を添付することにした。
これでもわかるようにそのスリットの方向にある種の意味があることを示唆していることになる。
なんのためにこのような細工をガウディは考えたのだろうか。
ボトルの首にスリットを入れる意味は何か。ということになる。
ここでその疑問を解くには、この教会の鐘楼の意味をまず認識しなくてはならい。鐘楼は,町の祭事の知らせをするためにカリジョンが設置されている場所である。

その鐘の中にぶら下がっている舌がその鐘を左右に振ることで鐘の本体にぶつかり、音を出して様子を知らせる役目を果たしているのだ。それでそのスリットはどのような役目を果たすのか。
     
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