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建築家トップ > バルセロナ便り > 第278回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

フィンカ・グエルの実測と作図の依頼を受け

ガウディの作品で不思議な現象があることに気がつく。今までに何度か建築空間を見ていて、装飾的な部分と建築空間のあり方がどう見ても不思議な具合であることに悩まされた。
ガウディの初期の作品であるフィンカ・グエルはガウディ別邸という呼び方もするが、グエルにとっては別の邸宅ということになるけれどその住宅部分が門番小屋と馬小屋でしかない。住宅部分というのは後に1929年のバルセロナでの第2回目の万博の時にアルフォンソ13世のレセプション用の宮殿を建てたとされているので、別邸にならないと思っていた。このフィンカ・グエルの北側に既存する鍛鉄のドラゴンの門では、その片開きの扉を控え柱に支えているがこの柱の仕上げ方が尋常ではない。つまり柱台は組積で作られ次にレンガ造で支柱となっているのだ。支柱の中間にGのイニシャルに花文字が飾られている。ところがここのレンガ目地だけが特殊な仕上げの目地となっている。
それがとても不思議でならなかった。
この控え柱の先端には石のレリーフがされており頂点には果物の木のような演出となっている。
さっと見てしまうと単なる飾りにしか見えないだろうが、ガウディの日誌を紐解き彼の装飾概念を理解するとそれだけではないことに気がつく。中でもこのレンガ目地ではとても細かな破砕タイルが張りつめられているのである。他の建物部分と比較してもこれと同じ仕上げではない。
なぜこの部分だけに目地にまでしかも宝石のような細かな仕上げの破砕タイル仕上げるにする必要があったのだろうか。単に飾りだけするには手間暇がかかる作業であり職人泣かせの作業でもある。
この謎解きには建築以外の演出を検証する必要があると感じた。
その先頭に果物の様な木があるのでこれと何か関係があるのだろうか。ヒントになる様な演出をどこかでしているのだろうかということで、建築以外にも縦横無尽なケースとヒストリーを捜索しなくてはならなかった。
1982年にバルセロナの王立ガウディ研究室を代表するバセゴダ教授からこの別邸の実測と作図の依頼を受けた時、すでにこの別邸の作図が幾つかあったのにどうして再度の実測作図の依頼をしていたのか訪ねた。すると既存の作図と詳細における表現が異なっているために、それらを修正してほしいということでさらに精度の高い作図を求めていた。
私の作図を信頼してくれたのかとても嬉しく思ったのだが、それにしても装飾的な詳細の由来がどうなっているのか理解に悩まされた。
バセゴダ教授に聞くと自ら研究室にある書棚と資料ケースなどの資料によって調べることを強いられる。仕方なく私なりの調べ方となってしまった。当時はスペイン語も十分に理解していたとは思えなかったので、言語にこだわるより「建築言語」としての理解の仕方に専念していた。つまり従来の評論家たちによる文章と理論を追いかけるのではない。そこで思い出したのがガウディの言葉にもなっている地中海文化とその特性である。それらを覗くとギリシャ神話とその英雄ヘラクレスの登場ということになる。言葉に不自由していた自分ではあるが、そのヘラクレスの冒険を調べることにした。

彼の冒険の中にヘスペリアスの園というのがある。ここにはドラゴンが金の実のリンゴの守衛ラドンが登場するのである。その話とこのフィンカ・グエルがどのように関係し具体的にどのように建築的に演出しているのかということを考察してみる。
     
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