作品の背景にある土地の歴史
フィンカ・グエルではギリシャ神話の関係が演出されているというが具体的にはどうなっているのか。ガウディ建築の中で神話上の要素がもっとも具現化されたのがこの作品なのだ。そのギリシャ神話とは へシオドの「神統記」によるギリシャ神話に登場するゼウスとアルクメアの間に生まれるヘラクレスは、ギリシャの英雄として祀られている。この架空の人物がエウリステリウスの命令に従って12の冒険を行う。中でも11番目の冒険がドラゴンと戦うシーンで知られているヘラの所有していた「ヘスペリデスの園」ということになる。このヘスペリデスは、アトラスとヘスペリスとの間に生まれた複数の妖精達の名詞から名付けられている。この街がギリシャから最西端に位置するアトランティダ、実は北アフリカのリビアの東方にあっ古代都市の名前でキレナイカにあった古代都市を示していた。そこで守衛していたのがラドンという名のドラゴンであった。
そのドラゴンとヘラクレスは戦うことになる。ドラゴンを負かしたヘラクレスは不死身になれる金のリンゴを持ちかえり、エウリステリウスに渡すが彼はその金のリンゴをアテネに手渡す。
ヘラクレスがこのアトランティダの地にやってきて棍棒で大地を二つに割ってしまう。それがアフリカとイベリアの二つに分けられジブラル海峡となる。
それを象徴したとされる二本の柱で支えられたスペインの国旗として紋章になっている。この神話は当時のギリシャ商人たちの旅の様子を物語っている。
つまりギリシャ人達が地中海沿岸での旅の様子を描いていた話が英雄伝となって現代に伝承されているのである。それでスペインとギリシャとの関係が始まり貿易を促していた。
スペインの所々にヘラクレスの纏わるものが置かれているのはそのような理由からである。
当然、ギリシャ文化を伝えているわけでだから建築様式も浸透していたことになる。後にはローマ時代の影響をも受け、水道橋などもその上に築かれるようになる。
このようにしてプリミティブなイベロ人と交流することでイベリア半島でも新たな文明が入り込む。これがまちづくりとなり現在のスペイン文化の根源となる。
そこでは農業も、フェニキアとの交流で鉄も取り入れられ道具も発達し始める。もともと穴居住宅に住んでいたイベロ人達は農業のために平坦地に移動するようになる。そのようにして街が出来始める。
次にイスラム教徒のアラブ人達が侵入してくる。それが新たな文化を携えてイベリアに影響することになる。それが芸術であり数学であり医学でもあった。
彼らの幾何学模様をあしらった建築要素がやがてスペイン全体に普及することになる。それによってアラビスク模様が登場する。
かぎ状の門はその時代の成果である。
さらに幾何学の応用編の始まりとなる。
自然界に見られる幾何学が建築にも利用される時代なのだ。
幾何学による建築はエジプト時代、ギリシャ時代、そしてローマ時代と進化し幾何学も複雑化する。
時代が要求する生活要素の一環がこのようにして建築にも演出されているということになる。
さらにその幾何学と自然の摂理に従った形を建築に展開させるようになり、ガウディはそれらの応用展開をするようになった。
その形が実は、我々を感動させている要因になっているのである。
形のルーツを知ることでその展開も理解ができる。そこから自然観察の方法を学ぶことになる。 |