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建築家トップ > バルセロナ便り > 第326回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


装飾には詩的アイデアを

グエル公園のカルバリオでは3本の十字架がある。その土台は台形であるが階段状のピラミッドのように、まるでバレアレス諸島のタライヨという遺跡にも類似する。平面がスペードのような、または矢印のような形であるということを実測・作図で確認した。 これはガウディの感性が大きく演出していることも理解できる。
本来であればこの場所に高さ10m程の十字架だけが立てられる予定であったことは、ラフォルスによる伝記「ガウディ」のガウディによるデッサンからも伺うことができる。 ガウディが亡くなった1926年以後に、グエル公園のガウディの家にあった資料を整理し、サグラダ・ファミリア教会に移動させた。そしてそれらの資料をベースに1929年に執筆された最初の伝記が「ガウディ」である。この中の作図からΑΩの文字が読み取れる。しかも中央にはJが見られるからJesusのことでありキリストということになる。 しかしそれは実施されずに1905年までのこの十字架の丘(Calvario) となって、今に至る。
私はグエル公園の階段のみを測っていた時にこの十字架の丘を測っていた。その頃は何もわからず測っていた。しかもこの丘への登り口には洞窟の穴も見えていたが、草や蔦でかなり覆われていた。それから、サグラダ・ファミリア教会の実測作図を終えてから、グエル公園の本格的な実測を始めた頃にはすでに原書も読めるようになっていたので、その公園についての説明を読み始めていた。
バセゴダ教授が1989年に執筆した「Gran Gaudí」-巨匠ガウディ-の中にこの公園の説明がある。それによるとこの洞窟は化石が見つかった場所であり、その化石は後にシウダデラ公園の鉱物博物館に寄贈されている。もちろんグエル公園の計画が始まってからのことであるから、これらの出来事もガウディは知っていた。

例えば ガウディは日誌には 「家について」
「懐かしい家族、歴史的功績、民話、詩、劇、母なる大地の優しさを演出している」
としている。
装飾については
「装飾に関心を持つには、詩的アイデアを想起させなければならない。
目的は歴史的、伝説的、躍動的、象徴的、人間の生活における寓話、躍動と受難などである。そして自然を尊重し、動物王国、植物、地形を表現することもできる。
また体の形態、表面、ライン、それら全ての構成における幾何学そして美学の本質であるコントラストは、プロポ−ションの為に役立つ。」

ということまで示唆している。
つまり当時の社会動向も彼の装飾概念のテーマとして取り入れていることが理解できる。それは1899年に小礼拝堂ロサリオの窓を納められる時期である。この頃には同時に二つの化け物をメタモルフォシスというルネッサンス時代の演出方法を利用しての表現となっている。

一つは 体がとかげで顔は鼻の尖った人間の顔を持つ悪魔または化け物が爆弾を人に手渡そうとしている。もう一つは魚の体に人間の顔の化け物が、 袋に詰まった金銭を人に渡そうとしているシーンが見る角度によって演出されているのである。
しかも小礼拝堂の建設の間は禾梁アーチの受けとなっている肘木の部分に見られる。これらはちょうど20世紀初頭のものである。

     
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