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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

カサ・バトリョを英雄サンジョルディを
建築モチーフとしたと考えれば

ガウディは地中海の特性の中で“我々の力と美しい形の卓越性は、感性と理論の均衡にある。”としている。
現実と架空の対峙が時にはヘビやドラゴンのように同一視されることもあるが、サグラダ・ファミリア教会の場合は、あくまでもアダムとイブをリンゴで誘惑したヘビで、人間達に“労働と出産”という苦悩を与えたとされている。

その他に、ガウディの造り続けた聖家族贖罪教会の吐水口には、ゴシック建築様式を継承しているにも関わらず架空の動物達の替わりに実際の水に関わる爬虫類を模している。この建築演出が、20世紀に入ってからはその動物達がガウディの建築作品では抽象化されるのである。
グエル公園の噴水は、カラフルなトカゲで表現されるが、元々は爬虫類的表現になっており、カサ・バトリョでは、更にその爬虫類が建築と化したような作品となっている。その証拠に屋根の部分が鱗状の瓦葺きとなり爬虫類またはドラゴン的表現として化している。
その横にはタマネギ・ボールトの上に立体十字の尖頭をもった小塔が置かれている。

カタルニアでは、4月23日をサン・ジョルディの祭日として愛する女性に薔薇をプレゼントする。そして女性はお返しとして男性に本がプレゼントされるという習慣になっている。
バルセロナはその祭りの為に街角に本や薔薇の露店がずらりと建ち並び、通り行く人々の目を引いている。

これらの要素からサン・ジョルディによるドラゴン退治のシーンをカサ・バトリョに当てはめてみた。

すると立体十字の塔はサン・ジョルディの剣の柄、屋根はドラゴンの背中、ファサードのバルコニーは7つまたは8つの頭を持ったドラゴン
そしてトリビューンの部分は剣に刺されて苦しさのために叫んでいる姿を表現した口、という風に想定してみた。
もしこれがガウディのイメージとしての建築演出とすると、彼の作品を通してカタルニアの象徴である英雄サン・ジョルディの剣を演出しながら愛国心を強調していることになる。
しかしそんな単純な解釈だけではないはずだ。ガウディの言う“神話や伝統”の演出はこれでカバーできるかもしれないが、建築様式をどのように解決しているのだろうか。
スペイン建築史の中で回教徒建築の影響を受けているのは確かだが、その特性となっているミナレット(説教塔、見晴台)を表現することで、スペイン建築表現演出と見られるのはあまりにもイメージが貧困である。では他にどんな理由があるのだろう。
むしろ建築はバナキュラーな特性と用途に応じて変化するものであるとすると、回教徒とは殆ど関係しないカタルニアでは、その回教徒的要素の必要性がなくなるということも考えられる。とすればガウディの利用する塔の概念は、他にどんな意味をもつようになるだろうか。

ガウディが建築作品に立体十字のついた塔を取り入れるのはなぜだろう。
ここで塔をもったガウディの建築作品を挙げるとグエル別邸、エル・カプリチョ、テレサ学院、グエル邸、ベージェスグアルド、カサ・カルベ、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、グエル公園、コロニアグエル教会地下聖堂、聖家族贖罪教会とある。




   
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